中国軍ナンバー2の何衛東・中央軍事委員会副主席(68)が3月11日の全国人民代表大会(全人代・国会に相当)閉幕後、公の場から姿を消し、粛清説が流れています。「軍事委員で政治工作部主任である苗華上将が昨年11月、規律違反で停職状態にあり調査を受けている」という発表があってから5カ月、中国軍の最高指導機関である中央軍事委で再び事件が起きました。
【写真】習主席から上将昇進の辞令を受け取る何衛東・東部戦区司令員(2019年12月)
何氏は張又侠副主席とともに習主席を補佐する中国軍の最高幹部です。共産党の最高指導部である中央政治局を構成する政治局員24人の一員でもあります。粛清説が事実ならば、1967年の賀竜氏以来初めて現役軍人の軍事委副主席が粛清されることになります。専門家の間では腐敗問題や軍内での派閥形成などが粛清の原因として取り沙汰されています。
何氏は台湾侵攻作戦を担当する東部戦区司令員を歴任しました。李尚福前国防相、秦剛前外相、苗華軍事委員と並び、習主席が異例の抜てきを行った人物です。最側近の相次ぐ落馬は習主席自身にも大きな政治的打撃になるという分析が聞かれます。
■全人代閉幕直後に逮捕説
何氏の粛清説は3月中旬からソーシャルメディアで流れていましたが、真偽の確認は容易ではありませんでした。台湾海峡封鎖演習の指揮や病気療養などで公の場に出られないのではないかとする見方もありました。しかし、1カ月以上も動静が伝えられず、粛清説が強まっています。
何氏は3月中旬から主な政治行事に出席していません。3月14日に北京で開かれた反国家分裂法20周年座談会に姿を見せず、中国軍首脳が一斉に参加した4月2日の植樹イベントにも出席しませんでした。4月8日に習主席が開いた中央周辺工作会議にも欠席しました。政治局員で欠席したのは何氏だけでした。
英フィナンシャル・タイムズは4月11日、消息筋の話として、「何氏は数週間前に軍事委副主席を解任され、汚職の疑いで調査を受けている」と報じました。米ワシントン・タイムズも3月25日、米国防総省高官の話として「何氏が粛清された」と伝えました。
■国防部報道官、否定せず
中国政府の公式発表はありませんが、欧米や台湾の専門家は、何氏の身辺に何か起きたとみています。李尚福前国防相も2023年8月から50日間、公の場に登場しなかった後、10月末に解任が伝えられました。
中国国防省の呉謙報道官が3月27日、何氏の粛清説に関する外国記者の質問に対し、「知っていることはない」と答えたのも奇妙でした。何氏は昨年11月、董軍国防相が汚職の疑いで調査を受けているというフィナンシャル・タイムズの報道があった際、「完全なねつ造であり中傷だ」と非難しました。呉報道官が強い口調で否定しなかったことから、粛清は事実である可能性が高いとみられています。李尚福氏が行方不明になった際も、中国外務省報道官は「知らない」と答えています。