先週末に国民の力で起こった前例のない「大統領選挙候補者交代」の動きは24時間後に水泡に帰した。国民の力執行部は金文洙(キム・ムンス)大統領選挙候補者の資格を取り消し、候補者を韓悳洙(ハン・ドクス)前首相に交代する案件について全党員を対象に投票を行い、これが否決されたのだ。その過程で金文洙候補は裁判所に「候補者資格取り消しの効力停止」を求める仮処分申請を行うなどして抵抗し、国民の力の一部議員らも「政治クーデターだ」として強く反発するなど、国民の力は2日間にわたり混乱した。
【写真】両手の拳を握りしめる与党・国民の力の金文洙大統領選候補
国民の力執行部は10日午前0時に非常対策委員会と選挙管理委員会を相次いで招集し、「金文洙候補の大統領選挙候補資格取り消し」「韓悳洙前首相の入党と候補者登録」の二つの案件を相次いで処理した。国民の力の大統領選候補を金文洙候補から韓悳洙候補に交代する作業が進められたのだ。これに先立ち国民の力執行部は今月9日夜に議員総会を招集し、「金文洙候補と韓悳洙候補の一本化交渉が決裂した場合、大統領選候補者再選出の権限を非常対策委員会に一任する」として議員らの同意(出席した64人中60人が賛成)を得ていた。その後9日夜10時30分に金文洙・韓悳洙一本化に向けた実務交渉が決裂したため、国民の力執行部は10日未明の非常対策委員会で金文洙候補の大統領選候補資格を取り消した。候補者交代の手続きを強制的に進めたのだ。
国民の力執行部は10日午前2時ごろ、同党ホームページに金文洙候補の資格取り消しを公告し、午前3時から1時間にわたり新しい大統領選候補登録申請を受け付けた。候補者として登録申請する際には「履歴書」「自己紹介書」「兵役・財産・納税・学歴の証明書」など32種類の書類提出が必要だった。その後深夜3時30分ごろに韓悳洙前首相が国民の力に入党届けを提出し、直後に候補者登録申請を行った。申請を行ったのは韓悳洙前首相1人だけだった。これを受け国民の力執行部は午前4時ごろに非常対策委員会を再び招集し、韓悳洙前首相を候補者に指名する案件について全党員を対象に賛成・反対を問う自動応答(ARS)調査を開始した。国民の力執行部はこの調査で候補者交代賛成が過半数に達した場合、11日に全国委員会を招集し韓悳洙前首相を最終的な候補者として指名する案件を議決する計画だった。
その時点で国民の力内部では「党員投票により候補者が韓悳洙前首相に交代する可能性が高い」との見方が有力視されていた。ところが金文洙候補はもちろん、韓東勲(ハン・ドンフン)前代表ら党内非主流派も強く反発したため、雰囲気が一気に変わった。金文洙候補は10日午前9時40分に会見を開き「不法で不当な候補者交代に対しては直ちに法的・政治的な対応に着手する」としてソウル南部地裁に候補者資格取り消しの効力停止を求める仮処分を申請した。金文洙候補は同日午後5時にソウル南部地裁で開かれた仮処分申請審問期日に出席し「全世界の政党の歴史でこのような形で(候補者交代を)非民主的に行うケースがあったか」と発言した。