無念を減らそうとする「善意」が韓国社会に告訴・告発の急増を招いた【独自】

 ソウル江南署は最近、近隣のマッサージ店全てがマッサージ師の資格なしで経営されていると主張し、「医療法違反」の疑いで相次いで告発してくる人物に頭を悩ませている。同署関係者は「告発があれば、ひとまず現場調査に行かなければならないほか、なぜ問題ないのかを説明するために証拠収集や報告書作成もしなければならない」と話した。「以前は『相次ぐ告発』については、一部だけを調べ、捜査を取りやめたが、それさえも不可能になった」と続けた。ソウル西部署は自身が告訴した事件が「嫌疑なし」と判断されると、1年以上にわたり「警察に事件を握りつぶされた」と陳情を行う人物の存在に苦しんでいる。

 行き過ぎた告訴・告発による被害は結局国民に及ぶ。本紙が最近、ソウル市内の警察署10カ所の捜査官20人余りを取材した結果、「虚偽の告訴・告発」と判明した事件を処理するのに平均6時間以上がかかってことが分かった。告訴・告発を行った当事者を呼び、少なくとも1時間は聴取を行うほか、陳述調書や証拠物などを分析し、捜査報告書を作成しなければならない。課長級による決裁を受けた後も送致・不送致決定書を作成する必要がある。

 警察庁によると、事件処理期間が6カ月を超える事件の割合は、2019年の5.1%から2022年には13.9%にまで増えた。そのあおりで毎年急増する仮想通貨詐欺や投資詐欺など対応が急がれる事件の捜査も遅れているというのが警察の説明だ。

 告訴・告発を乱発する政界と市民団体もこうした風潮をあおっていると指摘されている。与野党が党利党略で捜査機関に告訴・告発状を提出し、それを大々的にアピールする慣行も捜査機関の捜査力を低下させているとの批判が多い。

 米日の捜査機関は犯罪容疑がないとみられるか、軽微と判断される事件については、自主的な判断で事件を受理しない。民事で解決できる事件はまず一個人間の調整に任せる仕組みだ。ソウル大ロースクールのイ・チャンヒ客員教授は「虚偽の告訴・告発による捜査機関の行政能力浪費や、被告訴人の弁護士受任料など不必要なコストを告訴・告発人に負担させる方策を検討すべきだ」と話した。

ク・アモ記者、ヤン・インソン記者、キム・ミョンジン記者

【表】日本を圧倒する韓国の告訴・告発事件数

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  • ▲イラスト=パク・サンフン
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