「駐車できないとはどういうこと?」「すみません。この際引っ越されてはいかがでしょうか?」
ソウル市中浪区のオフィステル(オフィス兼住宅物件)に住むチョンさん(35)は先日、電気自動車(EV)テスラのモデルYを購入し想定外の事態に直面した。オフィステルのオーナーに駐車場利用について問い合わせたところ、「私のビルにEVは絶対に駐車させません」と言われたのだ。このオフィステルはすぐ横にタワー式駐車場が設置されていた。
チョンさんは「金を払って生活する場所に駐車できないとはどういうことだ。区庁に訴えるぞ」と抗議したが、オーナーは「EVから火が出て他の車に燃え移ったら責任が取れるのか?」と譲らなかった。そのためチョンさんは自宅から500メートル離れた月決め駐車場を毎月13万ウォン(約1万4000円)払って利用しているという。このオフィステル管理人はEVを所有する住民の抗議に耐えられなくなり今月退職した。
「火災へのリスク」を理由にEVの駐車を禁止する駐車場が増加している。本紙がソウル市瑞草区の江南駅や麻浦区の弘大入り口駅周辺の駐車場45カ所を調べたところ、約90%(40カ所)でEVの駐車を禁止していた。昨年8月に仁川市内の地下駐車場でベンツEVから火災が発生した事故をはじめ、昨年10月に京畿道安城市、今年4月には釜山市など、全国でEV火災が相次いだためだ。EV火災は火の手が一気に上昇し周囲に広がるため、特にタワー式駐車場では大規模火災につながりかねない。そのためこれらの駐車場の多くは入り口に「EVお断り」などの貼り紙が貼られてあった。全国各地で「金を払うと言っているのに、なぜ駐車する権利を奪うのか」と主張するEVドライバーと「火事が起こったら責任を取れるのか」と反論する駐車場管理人が激しく対立している。
「おいおい、EVは駄目だ。駄目!」26日午後3時、ソウル市瑞草区のある商業ビル駐車場に1台のテスラが入ろうとすると、駐車場管理人の70歳男性が大声で叫んだ。窓から顔を出したドライバーは残念そうな顔でUターンして立ち去った。このドライバーは10分ほど周囲の駐車場を探したが、結局駐車できず他へ行ってしまった。
隣の狭い道路には1台のEVが歩道に半分乗り上げた状態で駐車していた。周辺の立体駐車場は全て「EVお断り」のため、駐車場管理人が一時席を外した隙にそっと車を止めていったのだ。歩道前の立体駐車場管理人はため息をつきながら「こんな形で車を置いて、用事を済ませてから戻るドライバーが最近多くなった」と語る。オフィステルやマンションはもちろん、商業ビルや病院などでもEV駐車が断られるため、地下の充電スタンドが利用できないケースも多いという。