江原道江陵市に住むサラリーマンのキムさん(28)は今年2月にEVを契約し、引き渡しを待っていたところ、「EVはマンション地下駐車場利用禁止」との連絡を受けた。このマンションは地下にあったEV充電スタンドも「火災のリスクが高い」との理由であえて地上に移したという。大邱広域市東区の705世帯が住むマンションでは、一部の住民が地下駐車場の入り口でEVが入らないよう監視を続けており、住民の間で対立が起こっているという。
駐車場管理人らは「安全対策のためやむを得ない」と語る。麻浦区のあるホテルの地下駐車場管理人(62)は「昨年8月の仁川でのEV事故後、ホテルの会議でEVの駐車禁止が決まった」「EVドライバーがほぼ毎日抗議してくるので頭が痛い」と語る。江南駅近くの駐車場で6年前から管理人を続けている40代の男性は「ここには1日150台以上が駐車するが、高級車が多いので火災が発生すれば補償額がとんでもないことになる」と述べた。
EV普及を後押しする韓国政府の政策を理由にEVを購入したドライバーらは戸惑いを隠せない。韓国政府は昨年1月、EVなどを購入する満19-34歳の若い世代に20%の補助金を出し、高速道路通行料金減免措置を2027年まで延長した。ソウル市江南区に住むキムさん(59)は「江南駅周辺ではEVが利用できる駐車場はほぼないので鶏肋(けいろく、役には立たないが捨てるには惜しい)になった」「最近はEVに乗らず公共交通機関を使って出勤することも多い」と語る。
国土交通部(省に相当)の関係者は「法的には駐車場の側が『正当な理由』なしに特定車両の駐車を拒否することはできない」「火災のリスクがあるという理由だけでEVを駐車させないのは問題になる可能性がある」とコメントした。大林大学のキム・ピルス教授は「韓国では都心の駐車場が大きく不足しているのでEV普及を後押しするだけでは駄目だ」「政府が安全な充電スタンドを拡充し、駐車スペースを確保できるよう対策を進めねばならない」と指摘した。
ハン・ヨンウォン記者、朴正薫(パク・チョンフン)記者