五つの刑事裁判を抱える李在明大統領が最高裁判事30人中26人を任命できる法案、新政権発足初日に国会の小委を通過

「大法官増員法案」が通過するとどうなるのか

 もちろん、韓国憲法が保障する「大法院長による提請(任命請求)」手続きはあるものの、任命権を持つ大統領が望んでいない人物を大法院長が提請するのは難しい。大統領と大法院長の推薦人物が違っている場合、慣例的に事前調整を経由するプロセスも実現しない可能性が高い。ある高裁判事は「大統領が民弁出身者など進歩系の法曹人を候補にしたら、大法院長が拒否するのは容易ではないだろう」とし「大法官の提請を巡って大法院と大統領室の間で対立が大きくなりかねない」と語った。仮に、大統領が大法院長の提請を受け入れても、巨大与党の民主党が国会で反対したら提請権は無力化されかねない。

 ある部長判事は「一審・二審の裁判所で五つの刑事裁判を抱えている李大統領が、大法官の増員で自分に有利に大法院を構成しようとしている」とし「“誰も自分を裁く事件の裁判官にはなれない”という法の原則を崩す試み」だと指摘した。

 海外でも、政治権力が最高裁裁判官を増やす方法などで最高裁を掌握し、司法府の独立性を毀損(きそん)した事例は幾つもある。ベネズエラは2004年、最高裁の裁判官を20人から32人に増やし、政権寄りの人物でこれを埋め、行政府が司法府を掌握したと評された。メキシコは裁判官全員を国民投票で選ぶ直選制を導入し、与党寄りの人物が大挙して当選有力となっている状況だ。

■「法理・判例を樹立する全員合議体の弱体化も懸念」

 大法官の増員は、統一された法理と新たな判例を提示する大法院全員合議体(全合)の機能を弱体化させかねない、という指摘も出ている。現行の全合は、国民的関心の高い事件や社会の根本的価値の確立が必要な事件などを、裁判所行政処長を除く大法官13人で深く掘り下げる。大法院裁判研究官出身のある弁護士は「大法官が30人になったら、声の大きな一部の大法官が合議を主導し、投票式で運用される可能性が高く、深みある審理が難しくなる」とし「大法官が増えた際に小部や全合の運用方法などをどうするのか、というところから深思熟考すべき」と語った。

 一方、予算や空間などの実務的な問題も立ちはだかるだろう、という見方もある。

パン・グクリョル記者、パク・ヘヨン記者

【図】最高裁判事14人→30人 予想されるメリット・デメリット

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