右翼手部門はわずか200票差で勝敗が分かれた。イチローが39.3%でアーロン・ジャッジ(37.4%)を上回った。一方はシーズン62本塁打(2022年)を放って未来を代表する長打者としての地位を不動にし、もう一方は一つ一つの安打に美学を込めた「精密の伝道者」だった。ファンたちはイチローの通算3089安打、1シーズン最多安打(262本)の記憶を選んだ。これは単なる数字ではない。「本塁打よりもバント安打の技術の方にプライドを持っている」というイチローの一言は、どんな巨砲のバットよりも重みがあった。イチローはMLBでプレーする間、694本もの内野安打を放った。
投手部門でも「記憶の物語」が順位に影響を与えた。クレイトン・カーショウは70%の支持(複数投票)を得て、ジャスティン・バーランダー(72.6%)に次いで2番目に多くの票を集めた。カーショウは2013年から15年にかけて3年連続でサイ・ヤング賞、最優秀防御率、奪三振数1位を総なめにし、絶頂期を迎えた。ドジャースのエースとして柳賢振(リュ・ヒョンジン)とツートップを組んでいた時代、防御率が3点を超えたのはわずか2回だけだった。カーショウの時代は、完成型投手の最後の世代が活躍した時代だった。カーショウは伝統的なエース像を守り抜いた投手だ。
その他のポジションは予想通りの顔ぶれが並んだ。一塁手は703本塁打のアルバート・プホルス、二塁手は身長160センチ台の体格でメジャーを支配したホセ・アルトゥーベ、遊撃手はヤンキースをワールドシリーズで5回優勝に導いた「永遠の(ヤンキース)キャプテン」ことデレク・ジーター、三塁手は通算3166安打を記録したエイドリアン・ベルトレが栄冠を手にした。中堅手はマイク・トラウト(76.7%)、左翼手は薬物騒動で評価が色あせたものの、通算OPS(出塁率+長打率)1.051、MLB最多本塁打記録(762本)を持つバリー・ボンズ(69.9%)が選ばれた。救援投手は通算セーブ数歴代1位(653セーブ)のマリアノ・リベラ(88.5%)が圧倒的に支持された。
このアンケートは全盛期の記憶を基にした投票ではあったが、実際はそれ以上だった。数字でも受賞実績でもない、その名前を見ただけでマウンドや打席を思い浮かべることができる「存在」に票を投じた。(野球の物語の中で)大谷は今も進行形であり、イチローは既に歴史となった。カーショウは長休符を打っている。野球は記録で説明されるが、記憶として残る。今回の投票は記録で順位を付けたのではなく、記憶に基づいて順位を付けたのだ。
ヤン・スンス記者