ソウル高裁が被告人・李在明の破棄差し戻し審を延期 司法府が共に民主党の「防弾法案」を追認

李大統領の「司法リスク」消滅

 ソウル高裁刑事7部(裁判長:李在権〈イ・ジェグォン〉部長判事)が9日、李在明(イ・ジェミョン)大統領の公職選挙法違反事件の破棄差し戻し審の裁判を延期すると決定したことを受け、法曹界からは「共に民主党の推進する李大統領防弾立法に裁判所が正当性を付与してやった」と指摘する声が上がった。

【被告人・李在明】五つの裁判の進捗状況

 進歩(革新)系の与党「共に民主党」は、今月12日に予定されている国会本会議で、いわゆる「裁判中止法(刑事訴訟法改正案)」を処理する方針だが、法案通過前に「大統領在任中は裁判を延期」という民主党の論理を裁判所が認めてやった、という意味だ。これで李大統領は2030年6月までの在任期間中、司法リスクから事実上脱することになった。

■「民主党の防弾法、裁判所が追認したことになる」

 5月1日に大法院(最高裁に相当)が李大統領の選挙法違反事件を有罪の趣旨で破棄差し戻しするや、民主党は急いで刑事訴訟法改正案を発議した。改正案の内容は「被告人が大統領に当選したら、任期中は刑事裁判を延期する」というのが中心になっている。「大統領は在任中、刑事上の訴追を受けない」という韓国憲法84条の「訴追」範囲に起訴だけでなく裁判も含まれるかどうかを巡って論争が続いたことから、法そのものを改めて李大統領の裁判を延期させようとしたのだ。

 李大統領は選挙法違反事件の破棄差し戻し審だけでなく、偽証教唆事件の控訴審、大庄洞・慰礼・城南FC・栢峴洞事件の一審、違法対北送金事件の一審、京畿道公用カード流用事件の一審など、当選前に起訴されて裁判にかけられた事件だけでも5件あり、野党側からは「防弾立法」という批判が続いていた。

 こうした状況で破棄差し戻し審が先行して裁判延期を決定し、民主党は立法の正当性を認められた格好になった。ある現職部長判事は「李大統領の国際会議の日程などさまざまな事情が考慮されたのだろうが、結果的に、民主党が推進する防弾法に力を与える結果になった」と語った。

■「司法府圧迫に負担を感じたのだろう」

 この日、裁判部は裁判延期を決定するに当たり「憲法84条に伴う措置」とだけ表明した。具体的な事由は明かさなかったが、韓国憲法84条が定める大統領に対する不訴追特権の範囲に「進行中の刑事裁判」も含まれると見なした―というのが法曹界の解釈だ。幹部クラスのある裁判官は「韓国憲法84条の解釈に関連して、裁判を止めるべきだという意見もあり、(李大統領の)裁判を巡る社会的な論争も続いている状況」としつつ「(裁判部は)韓国国民が選出した大統領の任期を保障するという憲法の立法趣旨を積極的に考慮したのではないだろうか」と語った。

 民主党が推進する各種の防弾立法や司法府攻撃に負担を感じたのだろう、という解釈も出た。刑事訴訟法改正案のほかにも、民主党は「李大統領免訴法(公職選挙法改正案)」「大法官(最高裁裁判官に相当)増員法(裁判所組織法改正案)」などを推進し、司法改革を叫んでいる。高裁部長出身のある弁護士は「多数党である民主党の立法を防ぐことができない状況で裁判を強行するのは困難だろう」とし「裁判部の立場からは、あらかじめ裁判を延期して防弾立法を防ごうと考えたのかもしれない」と語った。

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