■「高速鉄道の負債、破産した恒大の2倍」
中国の高速鉄道も同じような有様です。習近平主席は政権を取った後、高速鉄道を中国の自主・革新の成功事例に挙げ、建設を督励しました。主席就任初年の2013年の時点で1万1000キロだった高速鉄道の総延長は、昨年末には4万8000キロまで増えました。当初は時速200-250キロだった走行速度も、時速300-350キロに引き上げられ、昨年には最高時速450キロの次世代高速列車CR450の公開も行いました。
しかし、まるでオリンピックの金メダル数を増やすかのように高速鉄道を拡張した代償は大きいものでした。高速鉄道の建設と運営を担当する国家鉄路集団は慢性的な赤字状態に陥り、負債も雪だるまのように膨れ上がったのです。2013年の時点で3兆2300億元(約65兆1000億円)だった同グループの負債は、昨年末には6兆2000億元(約125兆円)にまで増えました。日経アジアは昨年8月、「国家鉄路集団の負債は不動産バブルの崩壊で倒産した恒大集団の負債の2倍を上回る水準」と報じました。借金の山で「鉄道崛起(くっき、高くそびえ立つこと)」の神話をつくったのです。
多額の建設費用がかかる高速鉄道は、経済が発達して人口が密集している地域を中心に建設してこそ収益を出すことができ、経済効果も大きくなります。そうではない地域は既存の鉄道やバスでも交通需要を満たすことができるのです。中国は、人口が少ない西部や東北部にまでずらずらと高速鉄道の路線を建設しましたが、利用客数は多くないので、赤字が出るのです。国家鉄路集団は昨年、運賃の引き上げなどによって10年連続の赤字から脱することに成功しましたが、純利益は39億元(約790億円)にとどまりました。
■財政圧迫で公務員の給与まで削る
官営メディアの「中国経営報」は昨年5月、中国の26の高速鉄道駅が乗客不足などの理由で運営を休止したまま放置されている、と報じました。海南省儋州市の海頭駅は、2015年に4000万元(約8億1000万円)を投じて完工したものの7年にわたって放置され、23年にようやく運用を始めたといいます。1日の利用客数予測が100人程度と少ないのでオープンできなかったのです。北京南東部の亦荘(えきそう)駅も、08年に完成した後、17年にわたって門を閉ざしたままです。
巨額の鉄道負債で、中国政府は財政投資の余力が大幅に減りました。不動産バブル崩壊、消費不振などに積極的に対応するのが難しくなったのです。ただでさえ老齢年金の補助金支払いなど費用のかかる部門が多い中国の地方政府の中には、公務員の給与や手当まで大幅に減らすところも続出しているそうです。
崔有植(チェ・ユシク)記者