ゴワディア氏は珍しい血液疾患を患っており、ノースロップを離れ、1999年に「N.S.ゴワディア」という自身の技術コンサルティング会社を設立した。
同じ時期、ゴワディア氏ははハワイ・マウイ島に当時164万ドルの別荘をローンで購入した。資金が必要になったゴワディア氏は、2003年から05年にかけ、中国の官僚らと秘密裏に接触し、中国を6回訪れ、ステルス設計情報を漏えいした。その後の捜査によると、ゴワディア氏は中国の航空試験施設を訪れ、設計の欠陥を指摘し、ミサイル排気システムと熱信号(赤外線放出)についても説明したことが明らかになった。中国から11万ドルを受け取り、それを住宅ローンの返済に充てたという。
11万ドルは当時としては少なからぬ金額であり、やがて米税務当局に摘発され、米連邦捜査局(FBI)が捜査した。2005年10月、FBIはハワイの自宅からコンピューター、設計図、電子メール、USBドライブなどの機密資料を確保した。彼が漏えいした資料の中には空対空ミサイル回避技術、巡航ミサイルの設計、B-2の排気システムの設計も含まれていた。ゴワディア氏が2002年にステルス以外の軍事技術に関する機密をファクスでドイツ、イスラエル、スイスなど8カ国に送っていた事実も明らかになった。
ゴワディアは2005年に逮捕され、長期間の裁判を経て、2010年にスパイ・武器輸出規制法違反の罪など起訴事実17件のうち14件で有罪判決を受けた。
ゴワディア氏が米国にどれほど大きな被害を及ぼしたかは公にされていない。ゴワディア氏は弁護人は「公開された情報」をシェアしただけだと主張した。
しかし、ゴワディア氏が中国を秘密裏に訪問した時期と重なる2000年代初めから、中国はH-20長距離ステルス戦略爆撃機の開発を始めた。米情報当局はゴワディア氏が漏えいしたB-2のステルス推進・排気システム設計資料が中国による赤外線探知回避技術の開発に決定的な役割を果たしたと判断している。
B-2の重要技術が外部に流出したということから、防衛産業と米国防総省は大きな衝撃を受けた。 流出経路と被害規模に関する緊急内部調査が行われ、ノースロップ・グラマンだけでなく、米防衛産業全体でセキュリティーシステムが大幅に強化された。
米情報当局は、ゴワディア氏が漏えいしたステルス推進・排気システムの設計が中国のH-20開発に直接応用され、長距離ステルス巡航ミサイルであるCJ-100(長剣–100)の開発にも大きな影響を与えたとみている。
イ・チョルミン記者