「ここは面積1500平方メートル規模の工事現場です。数十億元かかりました。中国料理店やバー、カラオケ、中国風のあずま屋を作ります」
中国の動画共有プラットフォーム「抖音(ティックトック)」に最近投稿された映像だ。屈強な40代の中国人男性が腕を組んだまま説明すると、10人ほどが「分かりました」とうなずいた。撮影場所は中国ではなく、ソウルの繁華街明洞のど真ん中だ。売買価格が4000億ウォン(約423億円)を超えるとみられる8階建てのビル7階部分を1フロア丸ごと借り、施工準備中の現場には至る所に砂が積まれていた。男性は建物のあちこちを回りながら、手振りを交えて、「ここは鶏料理コーナー」「ここは刺身料理店」などと紹介。さらに「フロア全体に8つの中国式店舗を作る。中国料理店は(中国の伝統建築様式である)徽派や蘇派様式で美しく作りたい」と語った。
韓国政府は今年第3四半期から年末まで中国人団体観光客に対し、一時的にビザなし入国を許可すると発表した。それ以降、明洞など中国人旅行客が多く訪れる主要商圏に投資しようとする中国資本が相次いでいる。昨年11月、中国政府が先に韓国人に短期ノービザ入国を認めたのに続き、限韓令(韓流禁止令)全面解除に対する期待が高まり、中国の免税業界、旅行会社、エンターテインメント企業の対韓国投資も活発になっている。
明洞などソウル都心部に「チャイナマネー」が本格的に流入しているのは、昨年12月の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領による非常戒厳事態をきっかけとした政治的混乱がある程度解消された影響もあると分析されている。香港紙サウスチャイナ・モーニングポストは最近、旅行マーケティング業者チャイナトレーディングデスクの資料を引用し、今年4~6月の中国人観光客による韓国旅行予約が昨年12月~今年2月の期間に比べ約24%増加したと報じた。同紙は「中国人観光客は韓国を政治的な安定を取り戻した安全な旅行地と認識している」と指摘した。
中国の免税店・旅行業界、エンターテインメント業界の韓国進出も活発化している。中国免税店集団(CDFG)と中国旅遊集団(CTG)は最近、中国人観光客の収益の60~70%を占める団体観光客を狙い、新羅免税店、ロッテ免税店と協力を模索していると表明した。韓国芸能大手SMエンターテインメントの2位株主となった騰訊音楽娯楽集団(テンセント・ミュージック・エンターテインメント・グループ)は、SMと提携し、中国現地でアイドルグループを結成する計画を発表した。