また特検側は「尹・前大統領が戒厳宣布の手続き的な瑕疵(かし)を補完しようと、姜義求(カン・ウィグ)前付属室長などに『事後宣布文』を作成するよう指示した」と主張したが、尹・前大統領側は「姜・前室長が任意にやったことで、指示したことはない」と反論した。
秘話フォン(秘密通話ができる携帯電話)のサーバー記録を削除せよと指示した疑いについても、尹・前大統領側は「保安規定に基づいて措置せよと言ったのが全て」だとした。警護処に「自動車の壁」「人間スクラム」「銃器所持」などを指示して公捜処の逮捕を妨害した容疑については「軍事施設である大統領官邸で逮捕状を執行するとは予想もできず、そんな指示をした事実はない」と述べた。
この日の令状審査では、尹・前大統領の「証拠隠滅の恐れ」が争点になった。特検側は「金成勲(キム・ソンフン)警護処次長と姜・前付属室長が警察や検察、特別検察官の取り調べを受けた際、尹・前大統領側の弁護人の立ち会いがあるかどうかで供述内容が違っていた」として、事件関係者らに供述を翻すよう懐柔・圧迫できるので勾留が必要だと強調した。しかし尹・前大統領側は「そんな事実はない」「主な関係者は拘束されており、影響力の行使も難しい」と反論した。
尹・前大統領は9日の午後2時12分、黒い自動車(起亜カーニバル)に乗って裁判所に到着した。紺色のスーツに赤いネクタイという服装だった。車から降りた尹・前大統領は、取材陣の「釈放から4カ月を経て再び勾留の岐路に立つことになった心境はどうか」などの質問には一切答えることなく、保安検索台を通って法廷に向かった。通常、令状審査時に検察は被疑者をあらかじめ呼んで勾引状を執行してから法廷に連れていく。だがこの日、特別検察官は勾引状を法廷の待合室で執行した。特検側は「元職大統領に対する礼遇という観点からのもの」と説明した。
一方、特検側は同日、洪壮源(ホン・ジャンウォン)元国家情報院第1次長を参考人として呼び、彼が戒厳直後に暴露した尹・前大統領の「政治家・法曹関係者逮捕指示」疑惑について取り調べた。
キム・ヒレ記者、オ・ユジン記者