「憲法第84条に基づく措置です」 裁判所の「14字改憲」【鮮于鉦コラム】 李在明大統領の刑事裁判延期

 裁判所は裁判を行うために存在する。有罪であれ無罪であれ、裁判を進めればよい。政治の心配は裁判所の仕事ではない。共に民主党が大統領裁判中止法を可決すれば、裁判は中断される。大統領が裁判所に呼ばれることはない。判決で引きずり下ろされることもない。そうなればこういう問いが出るだろう。「どのみち結果は変わらないのに、中断される裁判をなぜ続けなければならないのか」と。韓国社会を支配する後進的便宜主義だ。

 まず、政治的な面で異なる。裁判所が裁判中断を認めることと民主党が法案成立を強行することは同じであるはずがあろうか。法的にも異なる。裁判所による措置とは異なり、民主党による立法は憲法裁判所の審判を受けなければならない。その過程で国民は絶えず法の常識を問うだろう。何よりも誰が見てもこの法律は一人のための法律だ。前代未聞でこれからもないだろう。権力を手にしたからといって、こんな法律をつくってもよいのか。大統領の裁判問題は「法の下の平等」という理念に自動的に行き着く。本質的に政治ではなく法律の問題だからだ。憲法裁の判断は重要だ。さらに重要なことは、論争と法理を通じて公論を形成する過程だ。ところが、裁判所は全てを失った。裁判という本質的な責務と同時に、自身の権威と威信、民主的プロセスと法的成熟の機会をいずれもなくしてしまった。

 裁判所が置かれた立場を知らないわけではない。 曺喜大(チョ・ヒデ)大法院長と池貴然(チ・グィヨン)判事、裁判所と司法体系に対する政界の攻撃は狂気であり暴力だった。文在寅(ムン・ジェイン)政権にいよる司法機関捜査と金命洙(キム・ミョンス)大法院長の時代を経て、裁判所内部も分裂し傷ついた。法と裁判所を守る市民社会も元老グループも韓国には存在しない。自分たちの陣営を裁いたらひどい目に遭わせてやると怒る人々が全国の裁判所の塀の外に陣取っている。判事が原則を守っていれば、自分とその家族がどんな目に遭うか分からない。

 それでもこれは間違っている。裁判所関連のニュースで耳を疑った点がある。大法院が李在明候補の公職選挙法違反事件で上告審を強行すると、一部判事が「裁判所の政治的中立」という問題を提起したことだ。裁判をやるなというのだ。裁判官は法の専門家であり守護者だ。法を法に則って見つめ、誰であれ裁判を受けるべきだと信じる60%の国民よりも彼らの憲法精神は優れているのか。誰が法の守護者なのか。裁判と政治を区別できない判事たちが法の権威を地に落とした。マスコミは是非を論じるために、裁判所は裁判をするために存在する。政治にお節介な心配をするな。裁判を放棄した裁判所は閉鎖しろ。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員

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