「大家好(中国語でこんにちは)。請跟我来(私についてきてください)!」
先月25日午後2時、仁川国際空港第1旅客ターミナルの駐車場で、スーツケースを持って建物から出てきた8人の観光客に、40代の中国人男性が腰を90度折っておじぎをした。8人は数年ぶりに韓国を訪れた游客(中国人団体観光客)だった。中国人男性は11人乗りの黒いワゴン車のトランクに荷物を積み、周囲を確認すると、慌てたように車に乗り込んで走り去った。車はナンバープレートに「ホ」というハングル文字が書かれたレンタカーだった。運送営業が許可されていない違法車両だ。
夏の休暇シーズンを迎え、大型ワゴンタイプのレンタカーで空港から高額で外国人団体観光客を乗せる「違法コールバン(違法ワゴンタクシー、白タク)」が猛威を振るっている。特に最近では、中国国籍の違法なドライバーたちが急速に増えている。中国では違法改造のバイクや自家用車による無許可営業のタクシーを「黒車(ヘイチャ)」(無登録の違法車両という意味)と呼ぶが、この「黒車」が韓国にも上陸したのだ。今年3月に韓国政府は、今年第3四半期(7-9月期)から年末まで中国人観光客に対するビザなし入国を一時的に認めると発表したが、これをきっかけに「游客特需」を狙う違法営業が増加しているのだ。
タクシーとして登録されていないレンタカーに客を乗せて料金を受け取る行為は違法だ。これらの違法なワゴンタクシーは、合法のワゴンタクシーと同じ11人乗りのスターリア、15人乗りのソラティ(共に現代自動車)などをレンタカー会社から借りて営業しているため、見分けるのは容易でない。ただし、営業するためには国土交通部(省に相当)の許可を受けた上で合法タクシーであることを証明する黄色のナンバープレートを付けなければならないが、違法なタクシーはどれも白いナンバープレートを付けている。
本紙は先月末から最近まで、韓国人が運転する合法のワゴンタクシーに乗り、仁川空港周辺で違法営業をしている中国人ドライバーを追ってみた。先月20日午後3時、仁川国際空港から1.5キロの所にある国際業務団地では、どの路地にも「白いナンバープレートのワゴン」(無許可のワゴンタクシー)が連なって停車していた。至る所で中国語の話し声が聞こえていた。
路地でたばこを吸っていた中国人の男性に「中国の観光客を乗せているのか」と尋ねると、首を横に振った。しかし、ほどなくして電話が鳴り、男性は空港に向かっていった。車を追ったところ、空港の建物の方に入っていき、直後に中国人観光客9人をワゴンに乗せて走り出した。仁川空港ワゴンタクシー協同組合のイ・ドンウォン理事長は「中国人ドライバーたちは取り締まりを避けて空港近くで待機し、中国から飛んでくる飛行機の到着時間に合わせて空港に集まり観光客を乗せていく」と話した。
中国の違法ドライバーたちにとってなじみの行き先は、中国人団体観光客がよく訪れるソウル市内の明洞や東大門・南山・乙支路などだ。この日午前10時、東大門歴史公園(ソウル市中区)近くにあるビジネスホテルの前には違法ワゴンタクシーがひっきりなしにやって来て中国人観光客を降ろしていった。南山ケーブルカーの公営駐車場の近くには、至る所に「有償による運送行為の集中取り締まり」と書かれた垂れ幕が掲げられていたが、中国人ドライバーたちは全く気にしていない様子だった。