「戦時作戦統制権が韓国軍に移管されれば在韓米空軍は日本に移転する可能性も」

外交・安全保障の大物2人の提言

■チョン・インボム元特殊戦司令官

 李明博(イ・ミョンバク)政権で合同参謀本部の統制権推進団長を務めたチョン・インボム元特殊戦司令官は「38年にわたり軍生活を送った人間として、統制権移管に反対はしない」としつつも「統制権移管後、われわれの国防に問題がないほど武器と弾薬などを購入しようとすれば、200兆ウォン(約21兆円)あっても足りないだろう」と語った。米軍が提供していた偵察・監視アセット(軍事資産)、米軍レベルの指揮統制能力などを備えるには、巨額の費用が必要なのだ。

 韓米は朴槿恵(パク・クンヘ)政権時代に、韓国の軍事的能力、北朝鮮の核・ミサイルへの同盟の対応能力、韓半島と地域内の安全保障環境を評価して決定を下そうという「条件に基いた統制権移管」に合意した。細部の条件は数百項目に上る。これについてチョン元司令官は「弾薬や戦車の数量といった定量的指標は、誰が見ても充足されたかそうでないか分かるが、ほとんどの条件は定性的なので、充足されたかそうでないかあいまい」とし「政府が『統制権の移管を進めよう』と思ったら、評価者が影響を受けることは避けられない」「もし50人の評価者がいて、49人が『条件を充足した』と言ったら、残る1人は『私が見たところでは駄目だった』と言えるだろうか。極めて難しい」と語った。数多くの条件があるけれども、完全に客観的な評価は難しいため、「(政府が)決心しさえすれば韓国軍の能力とは関係なしに統制権移管ができるので危険」とチョン元司令官は指摘した。

 統制権移管後の在韓米軍削減の可能性について、チョン元司令官は「今、米国は国防費と陸軍を減らしたがっており、どこで兵力を減らすか、世界の米軍配置を見直している」とし「韓国が『統制権を返してほしい』と言ったら、泣きたい子の頬をひっぱたいてやるようなもの(事態を悪化させるだけだ、という意味)」と述べた。米軍は韓半島の防衛負担を減らしたいと思っているのだから、統制権移管はすぐさま在韓米軍の削減につながりかねない、というわけだ。さらに「在韓米軍の陸軍削減の可能性が高いが、空軍も在日米軍基地やグアムに再配置されるかもしれない。群山空軍基地のような場所は中国の打撃圏内でもある」と語った。

 その上で「統制権の移管が自主国防と緊密に関連していることは間違いないが、統制権を持てばそれだけで自主権を持つというわけではない」「韓米連合司令部は、米大統領の指示だけを受けて作戦を遂行するわけではなく、韓米の大統領が合意した内容を履行する」と語ったチョン元司令官。「統制権が移管されたら、韓米連合指揮システムは今よりも弱まるだろう」「平時ならともかく、戦時に韓国軍の将軍が、通訳将校に助けられつつ米軍を指揮するのは容易ではないだろう」と指摘した。

金真明(キム・ジンミョン)記者、ヤン・ジホ記者

【表】韓半島有事に支援を行う7カ所の在日米軍基地

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