第一に、韓中関係の強化でした。抗日戦争は韓半島の歴史とも連結しており、これをたたえる場に出席することは外交的に自然な動きであって中国との距離をさらに縮めることができる、というものでした。第二に、北朝鮮問題で中国の役割を引き出すための戦略的アプローチでした。朴大統領の戦勝節出席直前、北朝鮮は非武装地帯(DMZ)木箱地雷挑発を敢行し、韓国軍は11年ぶりに対北拡声器放送を再開しました。中国は北朝鮮に対して実質的影響力を及ぼし得る唯一の国であって、戦勝節出席は安全保障の側面からも意味がある、という説明でした。
さらに朴槿恵政権は、戦勝節出席を契機として中国と統一について話し合いを始めることで合意した点を、大きな成果として評価しました。朴大統領と習主席は、戦勝節記念式典の前日に開かれた韓中首脳会談で、異例にも統一に関する対話を交わしました。朴大統領が「韓半島は分断70周年を迎え、早く平和裏に統一されることが、この地域の平和と繫栄に寄与するだろう」と言うと、習主席は「韓半島が将来において韓民族により平和的に統一されることを支持する」と発言しました。中国はこれまで南北統一について言及することを控えてきましたが、韓国政府の立場に配慮したのです。
朴大統領は任期中、「統一大当たり」論を発表して統一に対し大きな関心を示していましたが、朱鉄基(チュ・チョルギ)外交安保首席を事前に北京へと送り、統一についての習主席の言及がぜひとも必要と主張して貫徹させたことが分かりました。
■米国の不愉快な視線、韓米日協力に亀裂が入る懸念
韓国政府のこうした立場とは異なり、朴大統領の北京訪問は韓国国内および海外で、予想よりも強い反発を呼び起こしました。米国のオバマ政権は、韓日間の慰安婦問題などで緊張が高まる中にあって韓国の大統領が中国の主席と並んで軍事パレードを視閲する様子が、韓米日安全保障協力に否定的な影響を及ぼしかねないと懸念しました。
私は2015年の朴大統領の戦勝節出席直後、ワシントンを訪れ、米国務省の主な関係者と会うことができました。非公開で行われた対面で、その関係者は米国の立場をこのように明かしました。
「朴大統領の中国戦勝節出席については、米国で『問題ない』という人もいるが、『同盟国の大統領がどうしてそんな行事に出席できるのか』と言って理解しない人もいる」。米政権内では朴大統領の決定に反発する雰囲気が強いということを、遠回しにほのめかしたのです。