昨年12月末、全羅南道務安郡の務安空港で179人の死者を出したチェジュ航空2216便事故について、パイロットが当時、ランディングギア(降着装置)や補助翼(フラップ)などを作動させようとした形跡がないことが確認された。鳥の群れと衝突して損傷を受けた右エンジンも止まったのではなく、相当なレベルの出力があったという。
これまで「鳥の群れと衝突してエンジン2基が故障し、そのためにランディングギア・システムが故障して胴体着陸を試みた」という分析が主だったが、実際にはパイロットが鳥の群れと衝突した後、ランディングギアを利用した着陸を試みることなしに、直ちに胴体着陸の準備に入ったということだ。
21日までの本紙の取材を総合すると、韓国国土交通部(省に相当)の航空鉄道事故調査委員会は、事故が起きた航空機の残骸の調査過程で、操縦席の前方にあるランディングギアのレバーが「OFF(オフ)」の位置にあったことを確認したという。パイロットがランディングギアを下ろそうとしたなら、ハンドルが「OFF」から「DOWN(下ろす)」に移動していなければならないが、そのままだったということだ。このレバーとは別に、操縦席の椅子のすぐ後方に手動でランディングギアを下ろすことができる別途の装置があったが、これもやはり動かした形跡がなかった。最終調査結果ではなく中間調査結果だが、ランディングギアを下ろそうという試みが全く行われていなかったということだ。
ランディングギアだけでなく、着陸時に使用する「補助翼」と速度を落とす「スピードブレーキ」のレバーもやはり作動させた形跡がないことが分かった。航空機はもともと着陸前にランディングギアと補助翼を下ろし、着陸後すぐにスピードブレーキが作動するようにあらかじめ設定しておく。ところが、このような操作を全くしなかったということだ。
可能性は大きく分けて二つある。まず、当時の状況があまりにも緊迫していて、このような操作をする余裕そのものがなかった可能性だ。油圧システムに損傷が出ている状況なので、操縦かんを動かすこと自体が容易ではなかった可能性があるということだ。もう一つは、わざとしなかった可能性だ。ある航空業界関係者は「ランディングギアや補助翼などを広げると、空気抵抗が増えて速度が落ちるが、エンジンが損傷を受けた状態で速度が落ち、滑走路まで行けないことをパイロットが懸念し、わざと胴体着陸を試みた可能性がある」と話す。