中国社会を揺るがした「赤い姉さん」事件 被害者たちはなぜだまされたのか

 中国・南京市で起きた俗称「紅姐(赤い姉さん)」事件が抖音(ティックトック)や微博(ウェイボー)などソーシャルメディア(SNS)を中心に大きな波紋を呼んでいる。女性に変装した38歳の男がオンラインチャットで知り合った男性を自宅に招き、性的関係を結んだ後、それを盗撮した動画を拡散した事件で、動画に登場する男性の身元がインターネット上で暴かれ、二次被害を量産している。過度な物質主義と厳しい社会情勢によって真の人間関係を結ぶことが難しくなり、情緒的な空虚感を抱く人々が増えたことが事件の背景の一つだという分析も聞かれる。

【写真】「赤い姉さん」は「赤いおじさん」だった

 南京市公安局によると、容疑者は「焦」という姓の男。計237人の男性が容疑者による盗撮被害を受けた。警察はさらに被害者がいるかどうか調べている。インターネット上では当初、容疑者が60代男性で、被害者は1700人に達するとの情報が流れたが、当局は誇張された数字だと説明した。

 現地メディアによると、体格が大きく男性的な顔をした容疑者が女性を装うことができたのは、フィルターカメラとボイスチェンジャーのおかげだった。容疑者は長髪のかつらを被り、濃い化粧、ロングスカート姿でリアルタイムで顔を補正する映像効果をかけ、音声を変えることで女性に変貌した。赤みがかった化粧をトレードマークのようにしていたことから、容疑者はは自らを「紅姐」と呼んでいたが、実は男性という事実が発覚した後は、インターネット上で「紅老頭(ホンラオトウ・赤いおじさん)」と呼ばれている。

 台湾の「遠見雑誌」によると、容疑者はSNSでライブ配信やメッセージを使い、被害者男性に接近し、親交を結んだ。やりとりが深まると、金銭的な代価のない性的関係を提案し、男性らを南京の自宅へと誘った。その後、被害者らと性的関係を結び、その全過程を盗撮し、動画を有料ポルノサイトに掲載して収益を上げた。

 容疑者が流出させた動画はとどまりなく拡散している。中国現地メディア、極目新聞によると、動画はSNSなどで1件当たり0.5~3元で販売されており、トラフィックを誘導するために無料で映像を流すサイトも生まれている。

 動画を拡散された被害者男性の身元が特定され、正常な社会生活が送れなくなる「社会死状態」に至るケースも生じている。25歳のある男性は最近、SNSで自分が被害者であることを認め、「数多くのメッセージがあったため、全てを告白することにした。人生がめちゃくちゃになった。南京を離れて他の都市に引っ越そうと思う」と語った。同時に盗撮された写真や動画の拡散をやめてほしいと訴えた。

 動画に登場する別の男性のケースでは、本人の個人情報と共に、3年間交際していた女性との結婚を控え、両家の顔合わせまで済んでいた状態だったが、動画が公開された後に破談になったという話も広がった。被害者男性の身元を暴く行為が広がると、中国メディアは動画を拡散する行為は明らかに違法であり、摘発されれば処罰を受けることになると報道している。

 インターネット上では被害者男性が皮肉るようなニックネームを付けられ、集団で話題にされているほか、男性らがプレゼント持参で容疑者宅を訪ねる姿、容疑者との会話や口論の場面をパロディ化する行為も広がり、事件を題材にしたコンテンツが絶えず再生産されている。

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