いまだに、北朝鮮の話が出るだけで後ずさりして彼我識別がぼんやりしてしまう公職者がいるというのは驚きだ。7月第3週の人事聴聞会で、複数の閣僚候補者が「大韓民国の主敵は北朝鮮か」という質問をあいまいに避けていった。ある候補は「主敵ではなく脅威」だともっともらしいことを言い、ある候補は「数十年前の表現」だという口実で答弁をごまかした。国家安全保障に責任を負うべき国家情報院長は、北を主敵と呼ぶことに「困難がある」と言った。
【写真】「憲法を軽視して民心に背く行いを続ける政党は解体すべき」
金正恩(キム・ジョンウン)は韓国を「第一の敵対国」かつ「不変の主敵」と宣言した。彼がソウルの地図を広げて図上演習をする場面まで公開した。北の政権は、韓国民主化後だけでも4回の流血の交戦を誘発し、韓国の軍人や民間人を殺傷した。それにもかかわらず、敵ではないという。主敵概念すら明らかでない人々が執権政党だとして居座り、国民の生命を守るつもりだという。
その中でも怒りが燃え立つのは、李鍾奭 (イ・ジョンソク)国家情報院長の「事実上の核保有国」発言だった。彼は「政策的には認められないが…」としつつも、北が「事実的には(核を)持っている」と述べた。彼は金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の対北政策を担当し、北の核開発の動きを希釈する上で先頭に立っていた人物だ。金大中政権の実力者として対北送金を主導していた朴智元(パク・チウォン)議員は、さらに上を行って「北を核保有国として認めよう」とまで主張した。北の核の完成に対する責任を取って血書でもすべき当事者らが、ただの一人として謝罪もせずに、まるで人ごとのように話している。
北朝鮮の核は、他のあらゆるリスクを全て合わせたよりも致命的な安全保障上の脅威だ。金正恩があのように大口をたたくのも、われわれが米軍にすがらなければならないのも、ひとえに北が核を持っているからだ。北の核開発をほう助し、意図していようといなかろうと支援まで与えたのが、民主党の歴代政権だ。核開発の意志はないという北の偽りの宣伝を拡大再生産し、ありとあらゆる名分の支援でもって国際制裁の隙間をくぐり抜けて金氏王朝の命脈をつないでやった。北朝鮮の核を防げなかった韓国にとって、北の核開発30年史は千年の恨(ハン。晴らせない無念の思い)と同じだ。こんなありさまにした最大の責任者が民主党だ。
第一の責任は、情報の歪曲(わいきょく)だ。金大中大統領は2000年に平壌で金正日(キム・ジョンイル)と会った後、「北は核を開発したことも、開発する能力もない」と言った。「私が責任を持ちたい」とまで豪語した。しかしわずか2年後、北がドイツ・ロシアからウラン濃縮用の部品を持ち込もうとして摘発された。翌年には核拡散防止条約(NPT)からも脱退した。
盧武鉉大統領は2003年の就任直後、「北が核兵器を持ったという証拠はない」と言った。だがその時点で、既に北は核弾頭まで完成させていた。盧大統領の発言から2年後、北は「核保有」を公式に宣言し、最初の核実験を敢行した。文在寅(ムン・ジェイン)大統領もまた、北には核放棄の意志があるとしてトランプをけしかけ、米朝シンガポール会談をお膳立てしたが、結局は詐欺劇として結末を迎えた。3人の大統領が金氏父子の口車に乗せられている間に、北は一時たりとも核開発を止めたことがなかった。北のスポークスマンのように誤った情報をばらまいて時間を稼がせてやった責任を免れることはできない。