中国の中・短距離ミサイルが自国や同盟国の安全保障にとって致命的な脅威になりかねないと判断した米国は、これに対抗してアジア・太平洋地域に中距離ミサイルを大挙配置することを計画している。昨年、米太平洋陸軍のチャールズ・フリン司令官(当時)は、メディアのインタビューで「中距離ミサイルを発射できる新型ランチャーが間もなくアジア・太平洋地域に配置される」と明かしたが、今回のダークイーグルの豪配置はその始まり、というわけだ。
米ニューズウィークは、ダークイーグルの豪配置について、中国の「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略を無力化する攻撃システムを樹立するものだと伝えた。中国のA2AD戦略は、最終的にはハワイを境界として太平洋を米国と二分して支配することを目標にしている。このためにフィリピン・台湾・沖縄を結ぶ第1列島線、グアム・サイパン・パプアニューギニアなどを結ぶ第2列島線、ハワイ・ニュージーランドなどを結ぶ第3列島線を設定した。中・長距離弾道ミサイルと空母・駆逐艦・潜水艦などの戦略アセット(軍事資産)で米国の進出を抑制し、韓国・日本・台湾を自国の軍事影響圏下に置こうとする構想だ。こうした状況での米国のダークイーグル配置は、オーストラリア大陸に米国が本格的な対中軍事拠点を構築する可能性を示唆しているのだ。ダークイーグルの射程は2800キロほどで、オーストラリアから台湾海峡までは届かないものの、潜水艦搭載が可能で、中国近海からいつでも発射できる。また、INDOPACOMが運用する迅速機動部隊「マルチドメイン・タスク・フォース」(MDTF/多領域部隊)が韓国・日本などの米軍基地に弾力的に展開することもあり得る。
自主国防ネットワークのイ・イル事務局長は「F16が烏山に移動して空いている群山基地において米国がMDTFと共にダークイーグルのローテーション配備に出ることを、『同盟の現代化』の一環として韓国に要求することもあり得る」「ダークイーグルは最高速度がマッハ17で、群山から3分以内で北京をたたくことができ、中国の立場からすると迎撃がほぼ不可能」と語った。第2列島線の外に位置するオーストラリアで待機し、いつでも中国大陸を「あいくち」のように刺せる戦略アセットというわけだ。
韓国軍関係者は「米国が中国の列島線突破を目標にインド太平洋地域の軍事戦略と態勢を弾力的に転換している一環」だとし「このところの在韓米軍の性格変化とも連動する構想」と語った。INDOPACOMが報道資料を通してダークイーグルの初の米本土外配置を公にしたのも、中国向けの警告という観点からのものだ。この関係者は「米国は戦略的柔軟性を発揮して、オーストラリアはもちろん韓国・日本・フィリピン・グアムなどからダークイーグルを発射できる」と指摘した。
実際、米軍はインド太平洋地域でMDTFを強化する傾向にある。MDTFは第1列島線など前方での作戦遂行が可能な新規部隊で、有事の際に中国本土を打撃する能力を持つことを目標にしている。米国は昨年、フィリピンにも、冷戦以降初めて「タイフォン」地対地中距離ミサイル・システム(MRC・射程1600キロ)を配置した。韓国軍関係者は「米国が中国の太平洋進出を封鎖するため、さまざまな戦略アセットを迅速に機動・運用できる軍の力と同盟の信頼を要求する局面が迫りつつある」と語った。
ウォン・ソンウ記者、ヤン・ジホ記者