韓国7位の建設会社ポスコE&Cは、相次ぐ作業員死亡事故の発生で政府からも圧力を受ける異例の状況に直面している。李在明(イ・ジェミョン)大統領が免許取り消しにまで言及する中、ポスコグループは連日非常対応体制で営業を継続している。
本紙による取材の結果、今年同社で発生した5件の重大災害事故のうち4件が週末を前後する月曜日と金曜日に発生していたことが判明した。昨年発生した3件の重大事故も全て月曜日と金曜日に集中していた。同社はそうした事故パターンを正確に把握し、対策まで示したが、再発を防ぐことができなかった。グループレベルの対応が不十分だったという批判は免れない。
ただ、財界と建設業界の一部では、とりわけポスコE&Cだけが過度に追及を受ける背景には政治的意図があるのではないかとの疑念も強まっている。事故を予防できなかった同社の責任は大きいが、死亡事故件数などを同業他社と比較した場合、大統領、政府、与党が一斉に批判するほどのケースには当たらないのではないかとの批判が出ているのだ。
■繰り返される「魔の月・金」
ポスコグループは今年6月に発表した「2024持続可能経営報告書」に「ポスコE&C安全特別報告」という特別ページを挿入した。昨年ポスコE&Cで起きた3件の重大災害事故を分析した内容だった。報告書によると、3件はいずれも週末の前後(月曜日2件、金曜日1件)に発生した。特に事故時間帯は全て正規作業時間の開始・終了の前後1時間以内であり、そうした時間帯に勝手に作業したり、安全基準を守らなかったりしたことで発生したと分析された。ポスコグループはそうした分析に基づき、「休日作業に対する事前承認と作業終了前後の集中管理」「監視カメラによるモニタリング強化」などの具体的な再発防止策も示した。
しかし、報告書が指摘した事故パターンは、今年も同じように繰り返された。本紙が今年ポスコE&Cで発生した5件の事故を分析した結果、1月16日(木)を除けば、4月11日(金)、4月21日(月)、7月28日(月)、8月4日(月)と全て月・金曜日に起きていた。グループレベルで掲げた「再発防止策」が結果的には無駄だったわけだ。
報告書には相次ぐ重大災害事故に関連し、「現場安全管理活動時間の減少」、「抜本的災害予防のための中長期的安全活動の不足」など現場の問題点に対する指摘も含まれたが、まともに改善は進まなかった。
ポスコグループは非常事態だ。ポスコE&Cは6日、代表にグループの安全特別診断タスクフォース(TF)チーム長であるソン・チヨン副社長を任命したのに続き、ポスコ浦項製鉄所の安全担当責任者であるイ・ドンホ副所長をポスコE&Cの安全担当社長補佐役に配置した。また、グループ内の部長級以上の職員には現在実施している「隔週での週4日勤務」を「週5日勤務」に一時転換することを求める電子メールも送った。鉄鋼、電池素材など主力事業が全て不況に直面する中、事実上グループ全体の力をポスコE&Cの事態収拾に集中している格好だ。
■グループ全体が緊急事態
政府・与党は圧迫を強めている。国土交通部は7日、先月末からポスコE&Cが施工する全国100カ所余りの建設現場に対する全数調査に着手。安全管理の実態と違法な下請けの有無などを調べていることを明らかにした。与党共に民主党は産業災害を起こした建設事業者を対象に3回目で免許を取り消す内容の法律整備の検討に着手した。李大統領の「免許取り消し」発言を受けたものだ。
産業界は息を飲んで事態の推移を見守っている。大企業関係者は「安全が重要なのは当然だが、大統領を筆頭に特定企業を狙って集中砲火を浴びせた結果、企業が皆慎重になっている」と話した。建設業界と財界の一部では事故を防げなかったポスコE&Cの責任はしっかり批判すべきだが、大統領が免許取り消しに言及しなければならないほど「悪徳企業」扱いすることについては「行き過ぎ」との批判が出ている。建設業界ではポスコE&Cは死亡事故が比較的少ないとされてきたためだ。
雇用労働部が民主党の李学永(イ・ハクヨン)国会議員に提出した資料によれば、2020年から昨年までの5年間の建設大手10社における労災死者数でポスコE&Cはサムスン物産と並んで死者が最も少なかった。今年も死者だけを見れば、現代エンジニアリング(6人)のほうが多かった。そのため、一部からは「ポスコE&Cに対する大統領と与党の集中砲火には何か別の背景があるのではないか」との見方も出ている。
建設業界からは、建設作業員の高齢化、ますます高くなる外国人労働者の割合といった構造的な問題を考慮することなく、単純に特定の建設会社の責任を問うやり方では労働災害の根本的な解決は難しいという声も上がっている。実際に昨年と今年ポスコE&Cで発生した事故の死者7人のうち6人が50・60代だった。今月初めに同社の光明・ソウル高速道路建設現場で発生した心停止事故では作業員が外国人だった。建設業界関係者は「さまざまな構造的問題を同時に改善せず、労災発生企業を代表的なケースとしてたたくやり方では事態の解決は程遠いと思う」と話した。
朴淳燦(パク・スンチャン)記者、チョン・スンウ記者、ハン・イェナ記者