韓米間にも貿易合意の後続措置、国防支出の拡大および防衛費分担金増額、在韓米軍の役割と責任の再調整を含む同盟現代化協議など、どれ一つとして容易ではない諸課題が山積している。李大統領は、トランプが7月30日に貿易合意のニュースを伝えつつ予告したとおり、3500億ドル(約52兆円)の対米投資のほかに「追加の投資額」を決めなければならないという課題も抱えている。またトランプは、韓国政府が大々的にPRした韓米造船協力プロジェクト「MASGAプロジェクト」の細かな内容を詰めることを要求したという。トランプ政権内部で一定の勢力を有し、トランプとも近いMAGA陣営の人物が、就任前から「李大統領は『親中』だ」と主張して外交・安全保障路線を批判し、選挙結果の正当性を問題にしたことも気がかりな部分だ。韓国と新政権に関して誤って注入された情報が、会談中トランプに韓国側の予想できない突発発言をさせてしまう変数になりかねないからだ。
儀典の観点からも、ぎごちない様子が演出されることはあり得るが、これはトランプが外交の格式を尊重しないにとどまらず、プロトコルを破壊する場合もしばしばあるからだ。ホワイトハウスを訪れる首脳は通常、オーバルオフィスでトランプと並んで座り、これを生中継するメディアの前で対話をすることになる。このとき、米国の取材陣の質問が降り注ぐのだが、ほとんどは2国間関係とは無関係の国内政治に関するもので、トランプは言いたいことをぶちまける。トランプが「在韓米軍4万人」のような誤った数字を言ったり、「防衛費100億ドル(約1兆5000億円)」のような最大の要求値を持ち出しても、李大統領がこれを正すに当たってあいまいな形になるかもしれないし、また、公の現場で無理に正そうとして押し問答やにらみ合いにでもなったら、会談が予想外の方向へと流れていきかねない。トランプは2018年5月、当時の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との首脳会談当時、文大統領を隣に座らせたまま25分間、取材陣の質問を受けながら国内の懸案についてほぼ一方的に話した。文大統領が質問に答えるや「前に聞いた話のようだから通訳して聞く必要はない」と言い、外交的非礼だとの指摘がかなりあった。
ワシントン=金隠仲(キム・ウンジュン)特派員