大谷翔平とシドニー・スウィーニーがうらやましいと思う人たちへ【朝鮮日報コラム】

3人に新しい命を与えてこの世を去った

29歳の視覚障害者、イ・ドンジンさん

「お父さんと食べる1杯のご飯が幸せ」

平凡な遺伝子が最も強いのかもしれない

 本紙の「ピープル&ストーリー」は、文字通り人の人生について書く紙面だ。人事と訃報を除いては、大半が大きなことを成し遂げた人や、ホットな人物を選んで掲載している。特に、野球選手の大谷翔平のような人物を最も歓迎する。野球の実力は言うまでもなく、好感の持てる印象と誰にでも好かれる人柄のおかげで、彼を嫌う人は見当たらない。彼が登場した記事には悪意的な書き込みがほとんど見られない。大谷をスーパースターにしている特徴(能力であれ、外見であれ、努力であれ)は全て生まれつきのものではないだろうか。大谷と平凡な人との格差は遺伝子を除いて説明しにくい。

【写真】義母・加代子さんらと観戦する真美子さん

 7月末、米国のジーンズブランド「アメリカン・イーグル」が、女優のシドニー・スウィーニーを起用したジーンズ広告で話題を呼んだ。「シドニー・スウィーニーは立派な遺伝子(genes)を持った」という文句の書かれたジーンズ広告のポスターにスウィーニーが近づき、「genes」を消して「jeans(ジーンズ)」と書き換える。これに加えて「『ジーンズ』は親から譲り受けるもの。時には髪の色、瞳の色、性格までも決定する」とコメントする。遺伝子とジーンズが共に「ジーンズ」という発音からなっていることに掛けた言語遊戯だったが、スウィーニーが青い目に金髪姿の白人であるため、白人遺伝子が優越であることを暗示しているという非難が寄せられた。しかし、この広告を初めて見た時、目に入るのは人種ではなく、強烈な性的魅力や健康さだ。金髪に染めて整形をしてもまねできない、生まれつきのオーラのようなものだ。人の力では勝てない「遺伝子の力」があるということをこの広告は物語っている。生まれつきのものに勝てないということから来る無力感のために腹が立った人がいるのだ。

 大谷やスウィーニーのように並外れた人々を紙面に載せながら、7月18日、短い死亡記事に登場した故イ・ドンジンさんがずっと頭から離れない。大谷と同年代の同青年は、世を去る際に、3人に臓器を寄贈した。彼は生まれて9カ月で眼球にがんができ、視力を失った。父親も視覚障害者で、母親はドンジンさんが中学に通っていた頃、心臓弁膜手術を受けて死亡した。そして、ドンジンさんも29歳という若さで脳出血によりこの世を去った。「遺伝子」うんぬんしたスウィーニーに怒りを覚えた人々のように、彼も両親から受け継いだものを恨んだのだろうか。父親のイ・ユソンさんの連絡先を頼りに電話をかけてみた。

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