生身の人間を地雷が埋められた場所に送り込み、爆死を黙認する北朝鮮軍の戦術を考えると、二人は生きているだけでもまさに驚くべき奇跡だ。北朝鮮はウクライナ軍の捕虜にならず自爆し犠牲になった兵士を先日朝鮮中央テレビで英雄として紹介した。「敵に包囲されると互いに抱き合い手りゅう弾を爆発させ勇気を持って自爆した」というユン・ジョンヒョク(20)とウ・ウィヒョク(19)や、「自爆を決意し手りゅう弾を爆発させたが、左腕が吹き飛んだだけだったので右腕でもう一度手りゅう弾を頭に置き勇敢に自爆した」とされるリ・グァンウン(22)などの話だ。自分の国を守る戦争でもなく、他国に雇い兵として連れていかれ「金正恩(キム・ジョンウン)将軍万歳!」という悲鳴と共に手りゅう弾を自分の体で爆発させる北朝鮮軍を見ると、80年前の神風特攻隊も膝を突くほどの狂気に思えてくる。
金正恩総書記は娘のジュエ氏を今月中国北京での戦勝節行事に同行させ、独裁政権の「4代世襲」を予告した。ジュエ氏はまだ年齢的には小学生だが、正装にハイヒールあるいは皮のコートにサングラス姿で登場し、何とかして大人の独裁者のように振る舞おうとした。北朝鮮当局は「尊貴なるご子弟」と紹介し、飢え死にする人が続出する中でも欧州の有名ブランドを数多く身に着けたジュエ氏をこれでもかと宣伝している。
「尊貴なるご子弟」という呼称はサイバー攻撃に人身売買、麻薬密売、雇い兵供給などで延命する独裁者一家には到底似つかわしくない。昨年冬にクルスク州の平原で奇跡的に生き残ったイ氏とペク氏こそ「尊貴なるご子弟」であり、保護されるべき韓国人だ。就任から100日を迎えた李在明(イ・ジェミョン)大統領は連日のように企業には厳しい態度で臨みながら「人の命の大切さ」を訴えているが、ウクライナに捕らえられている若者については一言も語らない。李在明大統領が本当に人権を重視するなら、南北の信頼回復を「妄想」であり「ばかげた話」と一蹴する金氏一家ではなく、二人の若者にこそ手を差し出すべきではないか。
ヤン・ジヘ記者