目前に迫った「ソフトな独裁」【朝鮮日報コラム】

民主主義の崩壊は戦車や警棒ではなく投票を通じてやって来た

国会、政府、司法に至るまで掌握の過程は合法的だが権力をけん制する仕組みは失われた

 ソフトな独裁はポピュリスト・アウトサイダーとファンダム(熱狂的なファン集団)の共同作品だ。李在明代表の政治基盤は実は貧弱だ。嶺南(慶尚南北道)・湖南(全羅南北道)に地域の基盤はなく、労働組合や市民団体とも特別な関係はない。ただケッタルの力だけで党の権力を掌握し、再び国会を支配し、国会は李在明防弾国会に転落した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の長官などを31回弾劾し、政府機能はまひした。わなにかかった尹錫悦大統領は12月3日の非常戒厳令で自滅し、政党、国会、政府が次々と崩壊した。その廃虚を踏み越えて李在明大統領がついに誕生した。

 李在明大統領は党代表だった時も法律には違反しなかったが、不法でなければ何でもやった。合憲な制度を、国政を破壊する武器として利用した。国会法制司法委員会がその典型だ。法案を最終審査する同委員会の委員長は第2党が担当するのが慣例だった。多数党の暴走を阻止する事実上の上院の役割を果たすためだった。ところが共に民主党は第21代と第22代国会でその慣例を破ったため、共に民主党が支配する法制司法委員会はブレーキではなく立法暴走の機関車となった。法律はそのままだが慣例が崩壊したことで民主主義は自らを破壊する自己免疫疾患のような凶器に変わってしまった。

 立法府と行政府を掌握した李在明政権は今、司法の掌握に乗り出している。大法院長(最高裁判所長官に相当)の聴聞会を強行する秋美愛(チュ・ミエ)法制司法委員長がその先頭に立っている。検察を解体し、あらゆる捜査権を行政府が持つようになった。予算の権限も大統領府に移ったが、これらは全て合法的な手続きで行われた。その一方で権力をけん制する仕組みはなくなった。このまま行くところまで行くと何が起こるか明らかだ。2500年前にプラトンは「暴政は他の政治体制ではなく民主主義から始まる可能性が高い」と警告した。今韓国でそれが起こっている。ソフトな独裁が目前に迫っている。

キム・ヨンスTV朝鮮報道顧問・元嶺南大学教授

【AI合成画像】「李在明大統領兼大法院長兼共に民主党総裁」

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