中国特殊部隊上陸、総統逃走のデマ拡散…台湾ドラマ「零日攻撃」が描く衝撃の展開

 例えば、まともな職業に就くことができず、社会に極度の不満を持つ20代の若者が親中犯罪組織に取り込まれ、反中デモに参加した台湾人を脅す政治やくざになる。中国の工作で治安体系がかく乱され、親中民兵隊が台湾人の行動を規制する状況も描かれる。最終話では中国軍の金門島侵攻に対応する台湾軍の指揮体系が大混乱に陥るが、中国の指令を受けてスパイの役割を担っていた国防次官の仕業であることが明らかになる。

 反中色が濃い頼清徳総統が率いる民進党政権は、製作費約2億3000万台湾元(約11億4000万円)の43%に相当する1億台湾元を支援した。実際に総統府の執務室と迎賓館での撮影を許可し、5月にはデンマークのコペンハーゲンで蔡英文前総統が参加した試写会まで開いた。こうした背景には、軍事的脅威と宣伝・扇動を並行した中国の攻勢に対処しなければならない台湾の切迫感があるとみられる。

 製作陣は「ミサイル発射や銃撃など実際の戦闘よりも中国共産党の『赤い浸透』に焦点を合わせた」と説明した。一般的な戦争映画のような全面戦争のシーンではなく、中国が台湾住民を取り込み、ソーシャルメディアをかく乱し、扇動を図るというシナリオに着目した。

 製作陣は台湾メディアのインタビューに対し、「ドラマ製作段階から中国による有形、無形の圧力があった」と話した。 鄭心媚プロデューサーは「製作陣の半分以上が匿名を要求し、最終盤に現場を去ったスタッフも多い」と語った。実際、中国はこのドラマに不満を示した。中国国防省は放送開始直前の今年7月末、「民進党政権は戦争の恐怖を助長し、台湾を対立の炎に追い込み、台湾住民を『台湾独立の盾』として利用しようとしている」という非難声明を出した。

 台湾のテレビ業界では異例のスタイルのドラマだったため、放映後もドラマに対する関心は収まることがない。「マスメディアを通じ、中国の脅威に対する警戒心を知らしめた」「政治スリラーという新しいジャンルを開拓した」といった評価が視聴者や評論家から聞かれた。一方で、あまりにも作為的かつ極端な設定でドラマの世界に入り込めなかったとの指摘があったほか、一部外国人俳優の下手な演技に対する批判もあった。親中傾向の野党国民党は「過度な国防プロパガンダにあまりにも多額の税金が投入された」「中国を不必要に刺激する」と批判した。

台北=リュ・ジェミン特派員

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