製造業が没落した地域で共同体が崩壊して家族がバラバラになり、その結果アルコールや薬物依存症、自殺、犯罪が一気に増える傾向は先進国では珍しいことではない。ノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ディートンはこれらが原因の社会の衰退を「絶望死」と呼び、米国では1970年代以降に生まれた低学歴の白人に特に多いと指摘した。ただし韓国では首都圏以外の全ての地域がこれに相当する。
ソウル市内のマンション価格高騰は地方崩壊とコインの裏表のような関係にある。今月15日に発表された不動産対策を巡り「今になって土地取引許可区域の外に住むのは知性がない」と言われるが、この見方にもそれが端的に示されている。ソウル市内に全てが集中している今の状況で、制度的に転入を徐々に難しくすること自体が、「防壁の外」を見捨てる「既得権」の隠れた意図だというのだ。地方の若者は何とかして首都圏で仕事をみつけようと必死で、また裕福な者たちも自分の富を首都圏に持ってこようとしている。
地方を崩壊させソウルだけを安全で繁栄した場所にするのは不可能だ。地方の若い世代を鉄砲玉のように使い捨てにする犯罪が増加すれば、ソウル市民もその代償を払わねばならない。ある統計データによると、昨年20代のボイスフィッシング詐欺被害者はソウル市内では1万人当たり13.1人で、これは全国平均の9.0人を大きく上回っている。過激な政治勢力が経済を崩壊させ、熟練工不足で工場経営が立ちゆかなくなる問題も人ごとではなくなるだろう。カンボジアでの犯罪は地方崩壊が招く深刻な社会問題の予兆ではないだろうか。
曺貴洞(チョ・ギドン)経済コラムニスト