トランプ政権1期目の大統領副補佐官(国家安全保障担当)を務めたマット・ポッティンジャー氏は、メディア上で「疾走するゴルフカートの後ろにかじりついたままでも、日本の指導者の軽快で単調な発言を、心を揺さぶる英語で伝えた」「彼が今後、どのような役割を務めようと、日本外交において大きな資産になるだろう」と評した。高尾氏は米日会談を前にトランプ大統領関連の動画、ゴルフのルールなどを何時間も研究し、通訳の準備をしたという。単に英語の実力だけではなく、気配や状況判断能力などに優れ「同じ話でも気持ちのいい表現をする才能がある」という。こうした理由から、トランプ大統領の目にも留まり、かつては高尾氏を「小さな首相」という愛称で呼んだ。外交消息筋は「トランプ大統領がジョークを込めて高尾氏を『次期首相』と表現したという後日談も伝えられ、彼が駐中日本大使館に赴任した当時、西側外交官の間でかなり有名になった」と伝えた。
日本外交は、こうして捉えたチャンスを逃さず、対米外交の「資産」になった高尾室長を重要な瞬間になるたびにリリーフとして登板させた。今年2月、当時の石破茂首相がホワイトハウスでトランプ大統領と初めて対面したときも、外務省幹部としては異例の首相通訳を務め、「トランプ対策の切り札」(読売新聞)と言われた。高尾氏は現在、外務省で駐留米軍に関する法律・制度などを管轄する日米地位協定室長を務めている。トランプ政権2期目の残りおよそ3年の任期中、米日間にはさまざまな外交・安全保障、経済・貿易懸案が山積みとなっているだけに、今後も引き続き2国間外交で主要な役割を果たすことになるものとみられる。
ワシントン=金隠仲(キム・ウンジュン)特派員