盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で発足した第1期真実和解委員会の調査で「朝鮮人民軍など敵対勢力による殺害」と結論づけられた事案が、後に「韓国軍・警察による殺害」として再申請されたケースもあった。B氏は2021年「6・25当時、全羅南道咸平郡で30歳だった父が警察に殺害された」として真相解明を申請した。当時、真実和解委員会の調査官らは村の住民や親戚などから聞き取りを行い「B氏の父は左翼勢力に殺害された」との証言を確保した。「親戚が左翼活動家から転向したため、B氏の父が左翼の標的になった」との具体的な証言もあった。しかしB氏は第2期真実和解委員会の活動開始と同時に「加害者は韓国軍・警察」として再申請した。
真実和解委員会は2021年「加害者の特定が難しい場合は韓国軍・警察と記入してもよい」とする案内をホームページに掲載したが、抗議を受け削除した。政界からは「真実和解委員会が、韓国軍・警察による犠牲者として補償を申請するよう誘導した」との批判が相次いだ。
専門家は「敵対勢力により犠牲になった場合は国が代わって補償する法的根拠はない」として「この制度的空白により加害者を韓国軍・警察へと誤認・歪曲(わいきょく)させる傾向が生じた」と指摘した。朝鮮人民軍など敵対勢力により殺害された場合、現行法では国からの補償は受けられない。これに対して韓国軍・警察による殺害と認められた場合、遺族は国を訴えて1人当たり1億ウォン(約1100万円)以上を受け取れるケースが多い。
与野党の一部議員らは第21代国会当時の2022年、朝鮮人民軍など敵対勢力の犠牲者も国から賠償あるいは補償を受けられることを定めた「真実・和解のための歴史整理基本法改正案」を提出したが、成立はしなかった。第22代国会でも国民の力の成一鍾(ソン・イルジョン)議員ら10人が同じ趣旨の改正案を提出している。憲法が専門の高麗大学の張永洙(チャン・ヨンス)名誉教授は「敵対勢力による犠牲者はこれまで国による救済の死角にあった」「第1期と第2期の真実和解委員会はいずれも彼らに対する補償法改正を勧告したが、国会は20年近くにわたり手をつけなかった」と指摘した。
ク・アモ記者、チョ・ミンヒ記者