双方の立場が食い違ったが、鄭長官は「(法務部長官などが)公式に指示しただろうか。(それでも)相当程度外圧と感じたというのが事実と判明した」と述べ、尹錫悦氏を支持した。
鄭長官はまた、2014年のセウォル号事故当時、黄教安法務部長官が現場での事故対応に不手際があったとされた木浦海洋警察署の船舶の船長に業務上過失致死容疑を適用しないよう光州地検に圧力をかけた疑惑に触れ、「候補者(尹錫悦氏)が検察総長になれば、指示が正当かどうかに関する明確な基準と原則を設けるべきだ」と述べた。法律専門家は「鄭長官の過去の発言を基準にしても、今回の控訴放棄で『慎重に検討しろ』という長官の発言は捜査チームに十分に外圧となり得る」と話した。
ソウル大法学部出身で、当選5回の国会議員である鄭長官は、普段から合理的で慎重だと評されている。与党議員としてはもちろん、野党だった際にも検察の政治的中立性を強調してきた人物だ。しかし、現政権初の法務部長官に就任してからは、態度が変わったとの評価がある。
鄭長官は9月30日の閣議で、李在明(イ・ジェミョン)大統領が検察の控訴慣行を指摘すると、「毎日検察局の業務報告を受けながら、口頭指示をしている」と述べ、論議を呼んだ。法務部長官は具体的な事件については検察総長だけを指揮できると定められているからだ。検察庁の廃止についても、鄭長官は当初、慎重論ないしは反対意見を示していたが、与党が強く推し進めると、密かに立場を変えた。
法曹界には鄭長官が検察に控訴放棄を暗示しただけでも、職権乱用容疑が適用され得るとの受け止めもある。2001年、慎承男(シン・スンナム)元検察総長が蔚山市長の収賄事件を捜査する蔚山地検長に「捜査がオープンにされない方がよい」「できない事件なら内偵を終了した方がよい」などと不当な指示を行い、職権乱用で有罪が確定したケースと似ているからだ。
ユン・ヒゴン記者