原子力潜水艦の保有を目指す韓国にとって必要なこと【寄稿】

トランプ大統領の同意で一気に動き出す可能性はあるが祝杯は時期尚早
韓国の核武装を警戒する米国は「軍事技術への転用」などに制約
韓米両国の同盟強化と結束が絶対条件

 二つ目は米国の軍事技術保護政策だ。原子力潜水艦に使用される原子炉は軍事兵器の特性上、原子力潜水艦やSMR(小型モジュール原子炉)と稼働方式が全く異なる。通常の原子力潜水艦は5%未満の低濃縮ウランで動くが、米国のSSBNは90%以上の核兵器用ウランを使用しており、ロシアは20-50%の高濃縮ウランを使用している。また通常の原子力潜水艦は核燃料を随時交換するが、潜水艦用核燃料は本来潜水艦の耐用年数まで少なくとも20年以上は使用できる。米国のSSBN技術は先端軍事技術のため、1950年代に英国に提供された以外に海外への提供はなく、米国はオーストラリアへの技術提供にも否定的と一部で報じられている。韓国の原子力潜水艦も中国や北朝鮮などに技術流出する可能性が重要な検討事項になるだろう。

 三つ目は用途上の制約だ。韓国が原子力潜水艦という高価な兵器を保有するのであれば、その用途を明確にしなければならない。長距離航行が可能な原子力潜水艦を韓国が南シナ海や台湾海峡に展開して中国けん制に加わるとか、中国近海で中国海軍艦艇を監視するのであれば間違いなく中国と激しく対立するだろう。ただし中国の顔色をうかがい原子力潜水艦を韓半島周辺だけにとどめ、北朝鮮が保有する70隻以上の潜水艦の監視しか行わないのであれば、これはあまりに非効率的で経済性にも欠ける。それならむしろ1カ月の航行が可能な先端AIP(非大気依存推進)ディーゼル潜水艦を複数建造し、韓半島周辺海域の各地に監視用の無人潜水艇と水中センサーを配備する方がはるかに効率的だろう。

 四つ目は今後の韓米同盟の不確実性だ。米国が英国に続きオーストラリアに原子力潜水艦技術を提供する背景には、オーストラリアが中国の海洋進出に共に対抗する重要な同盟国との認識があるからだ。米国は韓国の原子力潜水艦保有を検討する際にも同じ観点から検討するのは間違いない。そのため原子力潜水艦建造で両国の具体的な合意を引き出すため、あるいは今後10年以上にわたり韓国の原子力潜水艦保有を米国の将来の大統領たちにずっと支持してもらうため、さらには完成後に米国によるメンテナンス支援の保証を取り付けるためにも韓米両国の固い結束と信頼は絶対的な条件になるだろう。

李容濬(イ・ヨンジュン)世宗研究所理事長・元韓国外交部(省に相当)北朝鮮核大使

【写真】釜山港に入港する米海軍ロサンゼルス級原子力潜水艦「コロンビア(SSN-771)」

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