世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の尹鍈鎬(ユン・ヨンホ)元世界本部長が閔中基(ミン・ジュンギ)特別検察官(特検)チームに行った供述によると、旧統一教会は文在寅(ムン・ジェイン)政権(2017~2022年)の政府高官や釜山を地盤とする政治家に集中的に接近していた。こうした動きは旧統一教会の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁が2017年、政教一致を骨子とする「神統一韓国」戦略を発表した後、本格化した。これに関連し、宗教界では旧統一教会が教団にとって悲願の事業である韓日海底トンネルと対北朝鮮事業を推進するため、政界とのコネクションを構築しようとしていたのではないかとの疑いが浮上している。
■文鮮明の念願、韓日海底トンネル事業
韓日海底トンネル事業は韓半島と日本をつなぐ長さ230キロのトンネルを建設する構想だ。この事業は旧統一教会の故・文鮮明(ムン・ソンミョン)初代総裁が「中国から韓国を通じて日本に至るアジア圏大平和高速道路の建設」を表明して以来、旧統一教会にとって悲願の事業になった。旧統一教会はこれまで韓日海底トンネル研究会、世界ピースロード財団などを設立し、事業推進に力を入れてきた。
なぜ韓日海底トンネルなのか。宗教専門家は旧統一教会が日本で特別な地位を持つという点に注目すべきだと指摘する。旧統一教会の教理では韓国を「父の国家」、日本を「母の国家」と考える。今も日本の信者が京畿道加平郡にある旧統一教会の聖殿(天正宮)を訪れたり、国際結婚を目的に韓国を訪れたりしている。韓日両国をつなぐトンネルがつくられれば、自ずと旧統一教会の勢力拡大に役立つと期待したのではないか。
旧統一教会が慶尚道地域の与野党政治家に接近を試みたのも、海底トンネル事業と関連があると分析されている。旧統一教会が海底トンネルの韓国側の起点として有力視していたのが釜山だからだ。これと関連し、尹鍈鎬氏は今年8月、閔中基特検チームの取り調べに対し、2018年に旧統一教会が韓日海底トンネルの建設を働きかけるために共に民主党の田載秀(チョン・ジェス)議員に金品を渡したと供述した。田議員は、釜山市で3期連続当選を果たした現役議員で、親文在寅系の中心人物とされていた。李在明(イ・ジェミョン)政権発足後は海洋水産部長官を務めたが、金品授受疑惑の浮上で辞任した。
共に民主党に所属していた呉巨敦(オ・ゴドン)元釜山市長も2019年、旧統一教会関連団体が主催したフォーラムに参加し、韓日海底トンネルを推進するという内容の文書にサインした。呉元市長は当時の祝辞で「韓日海底トンネルとユーラシア鉄道共同体の研究に10年余り努力してきたと聞いている。南北が鉄道で結ばれれば、釜山は物流都市として地位を高める無限の可能性を持つ都市だ」と述べた。