今年1月に高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の逮捕状執行を妨害した容疑などで起訴された尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領に対し、趙垠奭(チョ・ウンソク)特別検察官(特検)は26日、懲役10年を求刑した。尹・前大統領は、この事件のほかにも内乱首謀者容疑事件などさらに7つの裁判を抱えている。尹・前大統領が被告人となっている8件の刑事裁判の中で、今回初めて求刑が行われた。
特検はこの日、ソウル中央地裁刑事35部(裁判長:白大鉉〈ペク・テヒョン〉部長判事)の審理で開かれた尹・前大統領の事件の結審公判で、特殊公務執行妨害容疑について懲役5年、職権乱用等容疑について懲役3年、虚偽公文書作成・行使容疑について懲役2年をそれぞれ求刑した。
特検は、尹・前大統領が「大統領警護処の公務員を私兵化して令状執行を組織的に阻止させた」と、求刑の理由を明かした。昨年12月3日の非常戒厳宣布前の国務会議(閣議)で一部の国務委員(閣僚)だけを招集し、国務委員の審議権を妨害した容疑に関しては「帝王的大統領制を変えるとして大統領室を青瓦台から竜山に移しても、これをけん制する国務会議の審議手続きに全く従わなかった」とした。これに対し尹・前大統領側は「帝王的大統領であったなら、このような犯行があり得ただろうか」「裁判部で綿密に調べて、善処してくれることを望む」と述べた。
先に尹・前大統領側は「非常戒厳が内乱かどうかが確定しなければ、逮捕妨害が違法かどうかの判断はできない」として、もっと審理をすべきだと主張していた。だが裁判部は受け入れず、来年1月16日に判決公判を開くと表明した。来年2月に予定されている非常戒厳事態の核心である内乱首謀容疑事件よりも先に、一審の結果が出ることになったのだ。
■特検「尹・前大統領、警護処の職員を私有化」
26日に趙垠奭特検がソウル中央地検刑事35部で尹・前大統領に対し懲役10年を求刑した事件は、大きく分けて3つの容疑に関するものだ。第一に、今年1月3日に公捜処がソウル西部地裁から発付を受けた逮捕状を執行しようとしたとき、当時の尹大統領が警護処に指示して令状執行を阻止した容疑。第二に、非常戒厳宣布に先立って竜山大統領室に一部の国務委員のみを招集し、呼び出しを受けなかった他の国務委員9人の審議権を妨害した容疑。第三に、戒厳解除後、「非常戒厳は正当」という声明を外信に配布せよと指示した容疑だ。尹・前大統領が、事後的に作成した戒厳宣布文に署名した後にこれを廃棄することを承認した容疑と、軍司令官らの秘話フォン(盗聴防止機能付き携帯電話)資料をサーバーから削除せよと指示した容疑も、同日の求刑に含まれた。