米国がカリブ海に配備した空母「ジェラルド・R・フォード」(CVN78)は、2017年7月に米海軍へ正式に戦力として編入された世界最大、最先端の航空母艦だ。ジェラルド・R・フォード級空母の1番艦で、建造から就役まで12年、およそ130億ドル(現在のレートで約2兆200億円。以下同じ)かかった。
F35C「ライトニングII」やFA18E/F「スーパーホーネット」などの主力戦闘機や電子戦機、早期警戒機など80機以上を搭載し、非常時には1日270回まで出撃をこなすことができる。
また、蒸気の力ではなく、最初から電磁気の原理を利用し、軽い無人機から重たい戦闘爆撃機まで細かく出力を調整して射出するシステム(EMALS)を導入した。このほかにも、帰還する戦闘機を捕捉する着艦制動装置や、弾薬庫から甲板まで武器を運ぶエレベーターの作動方式が以前の主力空母だったニミッツ級と違っており、発電容量がニミッツ級の3倍に達する原子力発電所に至るまで、全てが先端かつ最大だ。
昨年6月に母港であるバージニア州ノーフォークを出港して、作戦配備7カ月目の空母ジェラルド・フォード。1月初めのベネズエラに対する空襲と、当時の大統領ニコラス・マドゥロの逮捕につながる作戦にも投入された。
しかし、こうした世界最先端の空母が、意外な「伏兵」に苦しめられている―と、米公共ラジオ(NPR)が最近報じた。なんと、空母に設置されたおよそ650個の便器が問題なのだ。用を足したら汚水管が詰まってしまい、4600人に達する乗組員は生活面で大きな不便に直面しているという。
この事実は昨年7月24日にジェラルド・フォードがノーフォークを離れ、初めて欧州と地中海に向かってからおよそ1カ月たったころ、同艦乗組の水兵から電子メールを受け取った母親がNPRにこうした不衛生な環境を知らせたことで発覚した。NPRは「情報自由法(FOIA)」に基づいて関連情報を取得し、報道した。
NPRが米海軍から提供された、日付不明のある内部文書によると、空母ジェラルド・フォードが初めて海外に投入された「2023年6月以降、艦に全乗組員が搭乗したときはほぼ毎日、汚水処理システムの一部を修理してほしいとか、詰まったところを直してほしいという故障の通報」が入った。
また、乗組員では修理ができず、2023年の就役後に42回も外部の支援を要請したことがあり、しかもその頻度はむしろ増えていて、昨年は32回に達した。
昨年3月には、4日間で205件の故障通報を受理した。当時、同艦のエンジニアリング部門が全部署の首席下士官に送った電子メールには「汚水処理システムが水兵たちによって毎日誤用され、壊されている。われわれの整備兵は修理需要を満たそうと、1日19時間もトイレばかり直している」と記されていた。
同艦のトイレの汚水管がこれほどひんぱんに詰まる根本的な理由は、軍用として最適化作業が行われていない、十分に検証されていない「真空式汚水処理システム(VCHT)」を使ったからだという。
大型クルーズ船で使っているVCHTは、水をあまり使わず、圧力差を利用して汚物と空気を瞬間的に吸い込む。サッと吸い込まれる旅客機のトイレの便器と同じ原理だ。旅客機は高高度の低い気圧を自然に利用しているが、海水面の航空母艦は大型真空ポンプで気圧差を作り出す。