問題は、こうした真空汚水処理システムが、空間をできる限り圧縮的に使わなければならない空母に導入されたことにより、真空汚水処理管はいっそう狭くなり、設計はいっそう複雑になり、市販の一般的なトイレットペーパーや茶色のペーパータオルですらしばしば故障を誘発するという。こうなると、10の区画(zone)に分割されている同空母のトイレ汚水処理システムは吸引力を失う。
昨年8月に空母ジェラルド・フォードのエンジニアリング部門で作成された電子メールには「艦全体にわたって数千の部品があり、毎日故障する。便器の制御バルブが一つ故障しただけでも、位置によっては当該区画全体が『使用不可』状態になる」とつづられていた。
NPRは、軍用として検証されていないVCHTシステムの根本的な欠陥に加えて、乗組員の荒っぽい使い方が問題を悪化させている、と報じた。平均年齢が大学生に近い多くの水兵にとって、6カ月を超える空母生活は「浮かぶ寄宿舎」にも似た環境だ。だから、あまり注意を払うこともなく、トイレの便器にTシャツや長さ4フィート(約1.2メートル)のロープなどありとあらゆるガラクタを捨ててしまい、汚水管を詰まらせるという。
だから、同空母のチーフエンジニアはしばしば「参考:ヘッド(トイレのこと)使用の必要あらば、直ちに行うこと。13時30分よりおよそ2時間、システムダウンの予定。現在第6区画で真空漏れの箇所を探している(FYI, if you need to use the head, go now. At 13:30, expect the system to come down for about two hours. We are looking for a vacuum leak in zone 6)」というような電子メールを送るのだという。
乗組員の誤った使用のほかにも、汚水の配管にたまったカルシウムの沈殿物も、狭い配管を詰まらせる。クルーズ船と異なり、空母はひとたび作戦に投入されたら汚水の貯蔵期間が極めて長い。また、汚水管が原子炉の熱や高温配管と並んで密に配置された環境は、カルシウムが固体に変化しやすいのだという。軍艦の優先順位は「戦闘最適化」なので、配管の洗浄は「不便だが致命的ではない」という論理で後回しにされる。
空母ジェラルド・フォードは2023年以降、汚水システムの復旧のため、少なくとも10回の酸性洗浄(acid flush)を行ったが、1回の洗浄に40万ドル(約6220万円)かかる。この作業は、港に停泊しているときしかできない。
NPRは「既に米政府説明責任局(GAO)が2020年に報告書で『この真空汚水処理システムは容量が足りず、設計が不十分だ』と指摘したにもかかわらず、4600人の水兵が何カ月もの航海中、ランダムに故障を起こす汚水処理システムに我慢しつつ生活している」と批判した。
なお、米海軍艦隊総軍(Fleet Forces Command、USFFC)報道官のデイブ・カーター中佐は、NPRへの返信で「トイレの問題は改善し、トイレの使用中断の平均時間は30分から2時間。作戦には何の影響もない。配管の改善作業が予定されている」と明かした。ただし専門家らは、NPRの取材に対して「今年中に根本的な解決策が整えられる可能性は低い」と語った。
イ・チョルミン記者