■「世界文学全集」の牙城崩れる…「キンパンネ」などの新語は意味不明な誤訳に
AIの翻訳力が向上したことで、これまで民音社・文学トンネなど大手出版社の牙城とされてきた「世界文学全集」を新たに出版する出版社が登場している。著作権保護の時効(著者の死後70年)を迎えた名作の数々を、AIを使って金をかけずに翻訳するのだ。
ここ30年以上にわたって科学・技術関連の学術書を出版してきたある出版社が、出版界で話題になった。昨年10月からわずか3カ月で『星の王子さま』『変身』など12冊を出版したのだが、この出版社には専門翻訳家がおらず、生成AIのGemini(ジェミニ)で編訳して人間の編集者が翻訳内容をチェックしていた。問題は、この出版社が手掛けたホメロスの叙事詩『オデュッセイア』の翻訳文の中に「無駄な会話は意味がありません。アルパノ?(私には関係ない)」と新語が混じっていたこと。「キンパンネ!(マジでムカつく)」「スブルジェ(自分で招いた災難、自業自得)」などの新造語まで古典作品の翻訳に使ってきたのだ。出版社の社長は「翻訳料がかかると本を制作できないため、AIに翻訳させたが、新造語の翻訳も世代間のコミュニケーションを面白くするためには必要だと思ったため、あえてそのままにした」と話した。
■「人間の翻訳家がAIを活用する時代に」
海外では人間とAIが協業するビジネスモデルが登場している。英国の「グローブ・スクライブ(GlobeScribe)」は昨年夏から、本1冊を100ドル(約1万5500円)で翻訳する事業を始めた。韓国で原稿用紙1000枚ほどの小説1冊を翻訳する場合、翻訳料が最低でも300万-400万ウォン(約32万-42万6600円)掛かるが、それを考えると非常に安価だ。この出版社では、AIがテキストの大部分を翻訳し、文学性が高い部分や複雑な部分を人間の翻訳家が手掛ける。英国の翻訳家らはこれに反発している。英国作家翻訳家協会のイアン・ザイルス会長は、英紙ガーディアンとのインタビューで「AIが作家(翻訳家)に取って代わり、人間の翻訳家の繊細な作業を同レベルでこなせるとか、そのレベルを凌駕できると主張するのは完全に誤った考えだ」と述べた。
韓国の翻訳家、ノ・スンヨン氏は「AIはこれまで人間が練りに練って生み出した翻訳の文章を学習して使っているため、近い将来は既存の翻訳書のほとんどはAIでも十分に訳せると思う」としながらも「AIでとんちんかんな訳文が出来上がったりしないように、監修作業がいっそう重要になってきた」と指摘した。
パク・チンソン記者