ケース1) 大企業の物流センターの労働者Aさんは、不当解雇を受けた後、会社を相手取って5年におよぶ長い訴訟の末、大法院(最高裁)で『解雇取り消し』判決を受けた。しかし会社側は『憲法裁判所で再度争う』として、裁判訴願と共に『大法院判決の効力を停止してほしい』という仮処分申請を行った。Aさんは訴訟の間、家を売って弁護士費や生活費に充て、ストレスで病気にもなった。だが復職の夢も束の間、またもお金を用意して弁護士を探さなければならない立場に置かれた。
ケース2) 商業ビルのオーナーBさんは、月極の家賃を払わないテナントを相手取って明渡し訴訟を起こし、大法院で最終勝訴した。裁判所の執行官が強制退去の執行に乗り出したが、テナント側は『裁判訴願を出すので執行しないほうが良いだろう。憲法裁で判決が取り消されたら、あなたが責任を取るのか』と脅した。執行官は結局、執行できないまま戻っていった。Bさんは『憲法裁の結論が出るまで毎月数百万ウォンの損害を被ることになった』とため息をついた。
これは韓国で、裁判所の判決を憲法裁判所で再び審判できるようにする「裁判訴願」制度の導入後に展開するであろう状況だ。AさんとBさんのケースは、大法院の判決が取り消されたら裁判をやり直さなければならず、憲法裁で勝っても、その間に生じた被害を甘受するか、その被害回復のためにまた別な訴訟を起こすことになりかねない。
このように深刻な反作用が予想される裁判訴願法案(憲法裁判所法改正案)が27日、進歩(革新)系与党「共に民主党」の主導により、韓国国会の本会議を通過した。法曹界からは「憲法が大法院を最終審に定めた『三審制』が崩れた」という反応が出ている。大法院判決の上にもう一つの裁判(憲法裁の審判)を経なければならない「四審制」になった、というわけだ。
最大の反作用として、法曹関係者たちは「裁判で負けた側が意図的に裁判を遅延させることに悪用しかねない」と指摘した。Aさんの会社が復職を拒否したり、Bさんのテナントが店のスペースを明け渡すことを渋り、裁判訴願を悪用することもあり得るのだ。特に、選挙法違反などで当選無効刑を言い渡された国会議員や地方自治体長は、裁判訴願で任期の最後まで粘ろうと小ざかしく立ち回る可能性がある。ある弁護士は「結局、裁判訴願はカネがあって権力がある人間たちが時間稼ぎ目的で使うことになるだろう」と述べ、「大法院の確定判決の法的効力は発生するが、裁判訴願と共に仮処分申請などで最終結論を遅らせることができる」と指摘した。