2月28日(現地時間)午前、米国とイスラエルがイラン空襲に乗り出し、首都テヘランをはじめとするイラン各地で爆発音がとどろいた。当時、イラン国民数百万のスマートフォンで通知音が鳴り始めた。空襲の事実を知らせる政府の警報メッセージではなく、500万人以上が使用している、礼拝(サラート)の時間を知らせるアプリである「BadeSaba Calendar」のお知らせだった。同日午前9時52分、ペルシャ語で記された「助けが到着しました」というメッセージを皮切りに、「審判のときが来た」「罪なきイラン国民にほしいままに加えた残酷で無慈悲な行為に対する代償を支払うことになるだろう」「武器を捨てて解放軍に合流せよ。自由なイランのために」などのメッセージがおよそ30分間、発信され続けた。イランの主要施設への打撃と同時に、アプリをハッキングした心理戦が繰り広げられたのだ。ウォールストリート・ジャーナル紙は、黒幕としてイスラエルを挙げた。ロイターは、専門家の話を引用して「宗教的な政府支持者で構成されるアプリユーザーの基盤を考慮した、戦略的な選択だった」と伝えた。
【写真】「デジタル・ブラックアウト」状態のイランに米軍が超精密打撃
イランの空で巡航ミサイルや戦闘機がテヘラン・イスファハンなどにある革命防衛隊(パスダラン)の地下センターを攻撃している間、地上では政府のウェブサイト、国営メディア、インターネット網などイランの情報インフラをまひさせる大々的なサイバー攻撃が繰り広げられた。イランは、窮迫した危機的状況で外部と完全に遮断され、こうした状況でも内部ネットワークは維持されるように設計されていた国家統制インターネットすら動かないという「デジタル・ブラックアウト」状態に陥った。各外信は「電子戦、DDOS(分散型サービス拒否)攻撃、イランのエネルギー・航空インフラと連結されたシステムに対する深層潜入が結合した、史上最大規模の組織的サイバー攻撃」と伝えた。中心的な施設をまひさせることから心理戦に至るまで、武器を利用した物理的打撃よりも大きな波及力を示し、サイバー戦が現代戦争の姿を変えつつある。
■イランの「デジタル・ブラックアウト」
米国とイスラエルが真っ先にたたいた場所は、イランのインターネット・通信網だ。世界的なインターネット・モニタリング機関である「NetBlocks」によると、普段は100%の水準を示していたイランのインターネットのトラフィックが、空襲が始まった2月28日から急激に落ち込み、現在も1%の水準にとどまっている。イラン全域で36時間以上もインターネットが遮断されている。インターネット・通信網の遮断にとどまらず、データセンター・銀行システム・政府ポータルサイトも障害に直面した―と伝えられている。イランの主要メディアもまひした。イラン国営通信社のIRNAやISNAなどが攻撃を受け、ウェブサイトが一時的にアクセスできなくなった。パスダランと関係があるメディア「タスニム通信社(Tasnim News Agency)」には、イランの最高指導者アリ・ハメネイを中傷するメッセージが掲載されたという。