「中国当局は脱北民逮捕後、中朝国境の収容所に監禁し、無差別に暴行や虐待を行っている」などと伝える脱北民らの証言を集めた報告書が公表された。脱北民らは北朝鮮への強制送還後、国境近くの保衛部(省に相当、以下同じ)施設に収容され再び暴行を受けるが、とりわけ妊婦は強制堕胎、乳児は殺害されるなど激しい虐待を受けているという。これらは北朝鮮人権情報センターが先日取りまとめた報告書「北朝鮮と中国の政府機関による在中脱北者強制送還システム」に記載されている。北朝鮮人権団体「北朝鮮人権情報センター」は今回の報告書を作成するに当たり、2000年から25年に中国当局に逮捕され、北朝鮮に強制送還された後に再び脱北に成功した人や、北朝鮮の安全部や保衛部所属だった脱北民ら100人以上から聞き取りを行ったという。
■中国公安「見えないところを殴れ」
本紙が入手した北朝鮮人権情報センターの報告書によると、脱北者らは「中国公安当局は脱北民を逮捕する際、法的根拠を告知しない」と伝えている。弁護人を選任できるなどの告知が受けられないのはもちろん、北朝鮮への強制送還に関する通知書も全く受け取れないという。
報告書によると、中国公安(警察)に逮捕された脱北民らはいわゆる「辺境大隊拘留場」と呼ばれる中朝国境地帯の治安拘留所や辺境の拘留所、送還施設などに収容されるが、脱北民らによると、これらの施設は環境が極度に悪く、内部では公安当局者による暴行が繰り返されているようだ。
拘留施設では妊婦や未成年の脱北民に対しても中国公安当局の暴行が相次いでいるという。ある脱北民は「出産直後の乳児と引き離された女性たちが『子供に会わせて』と訴えて鉄製の窓をたたくと、看守らに電気こん棒で殴られた」と証言し、別の脱北民は「公安は『見えないところを殴れ』と指示を受けているため、部下たちは足で背中や太ももの内側などを蹴り上げるので真っ黒なあざばかりだ」と伝えた。
ある脱北者は「中国当局は3日も食事を与えないこともあるし、また看守の食べ残しを混ぜて出されたこともある」と伝え、別の脱北者は「歯の跡が見える果物の皮や目玉焼きも出た」と伝えた。「拘留場の隅にゴムのたらいを一つ置いてトイレにし、いっぱいになるとそのまま捨てた」「広い部屋に何の遮るものもなく、床に穴を開けただけで用を足させた」などの記録もあった。
中国は強制送還などを禁じる難民条約に加盟しているが、中国当局は逮捕した脱北者に対しRSD(難民認定手続き)をしないという。ある脱北者は「朝鮮人と分かれば公安はすぐ手錠をはめる。それ以外は何もなかった」と伝えた。吉林省安図県の派出所で公安に逮捕されたという脱北者は「(公安は)逮捕容疑も、弁護士を選任できることも何も伝えなかった」「収監された後に拘禁期間や送還執行の時期を質問しても何も答えてもらえなかった」などと証言した。