■ホロコーストに「例外」はないイスラエル
ホロコーストは、ユダヤ人社会だけでなく国際社会においても極めて敏感な事案です。単なる歴史的事件を超え、集団のアイデンティティと記憶の核心となっているため、外交的には事実上の「禁忌」に該当する領域と認識されています。
こうした文脈から、イスラエルは李大統領がホロコーストを戦時中の非人道的行為と比較したこと自体を容認できない問題と捉え、超強硬な対応に転じました。ある外交筋は「ホロコーストはいかなる場合でも直接的な比較対象にすることが難しい領域だ」とし、「今回の発言は、触れてはならない一線を越えた側面がある」と評価しました。元駐イスラエル大使も「ユダヤ人社会はこうした発言を長期にわたって記憶し、繰り返し引用する特性がある。今回の発言が今後もユダヤ人社会で取り沙汰され続ける可能性が高いという点で懸念される」と語っています。
■水面下の調整ではなく「公開衝突」を選んだイスラエル
イスラエルは、2023年のハマスによる奇襲攻撃に対して大規模な報復作戦を展開し、最近ではイランを攻撃するなど、国際社会で反イスラエル世論が拡散する状況に置かれています。こうした中、韓国に対しても公然と強硬対応に乗り出し、友好国の首脳に対して敵対的表現を使用するなど、守るべき一線を越えてしまいました。
これに対し、李大統領がイスラエル外務省の声明に対して再びSNSで反論したことが、状況をさらに悪化させました。李大統領は、イスラエル側の反発についてXに「絶え間ない反人権的・反国際法的行動によって苦しみ、困難に直面している世界中の人々の指摘を、一度は振り返ってみても良さそうなものだが、失望した」と書き込みました。イスラエル外務省の声明に反論するのであれば、外交部報道官を立てれば済むところを、あえて李大統領が自ら再反論に及ぶ必要があったのかという疑問が残ります。
■外交部「ホロコーストの苦しみに共感」…事態沈静化を図る
議論が再燃する兆しを見せたことで、韓国外交部(外務省に相当)が動きました。外交部はXを通じ、「イスラエル外務省は李大統領の発言の趣旨を誤解している」として、イスラエル政府に遺憾の意を表明しました。
続けて「ホロコーストによってイスラエルが経験した言葉にできない苦しみに対し、常に心を寄せており、犠牲者の方々に深い哀悼の意を表する」と述べました。これは、李大統領にホロコーストを軽視する意図はなかったという点を強調し、事態を沈静化させようとするメッセージと解釈されます。外交部の元高官は「ホロコースト被害者への哀悼を公式に表明したのは、事態の拡大を防ぐための措置だ」と評価しています。