■ 日本銀行:30年ぶりの帰還、しかし地図なき道
日本銀行は三つの中央銀行の中で最も特殊な状況にある。FRBと韓国銀行が「引き締め」と「緩和」の間で方向性を模索している間、日銀はまだ「正常化」の端緒についたばかりだ。植田総裁は2023年4月の就任以降、30年間にわたるマイナス金利時代を終わらせ、政策金利を0.75%まで引き上げた。長期金利が過度に上昇しないよう直接介入していた「イールドカーブ・コントロール(YCC)」政策も段階的に撤廃した。
イラン戦争後の高油価によって物価上昇傾向がより鮮明になれば、この正常化の速度は速まる可能性がある。植田総裁は去る3月に金利を据え置きながらも、「景気の下振れが一時的であり、基調的な物価動向に大きな影響を与えないのであれば、利上げは十分に可能だ」と述べ、追加引き締めの意志を明確にした。現在の0.75%は依然として低い水準であり、数回の利上げを重ねても景気を過度に押し潰すことはないかもしれない。
しかし、日銀の前には地図がない。30年間マイナス金利に慣れ親しんだ家計や企業、そして莫大な国債を抱える金融機関にとって、利上げはFRBや韓国銀行のそれとは全く異なる衝撃波を生む可能性がある。ここにスタグフレーションの圧力が噛み合えば、その波紋はさらに予測困難となる。正常化を急ぐあまり、ある一線を越えた瞬間に衝撃が急激に増幅しかねない。問題は、その一線が正確にはどこにあるのか、今は誰も知らないという点だ。
■ 韓国銀行:新たな船長、見知らぬ航路
韓国銀行には新たな首長が就任する。李在明(イ・ジェミョン)大統領が、国際決済銀行(BIS)経済顧問兼調査局長の申鉉松(シン・ヒョンソン)氏を次期総裁に指名したことで、5月の金融通貨委員会から彼が会議を率いる見通しだ。
申氏はどのような人物か。低金利の長期化が家計負債の累積と金融不均衡を招くと早くから指摘しており、2022年のグローバルな利上げ局面では先制的利上げの必要性を強調した。この点において、彼は明らかに「タカ派」である。しかし同時に、供給ショックによる一時的な物価上昇には金融政策が過度に反応する必要はないという立場も示してきた。つまり、金融不均衡とインフレ期待には断固として対応しつつ、ショックの性格に応じて政策の強度を調節すべきだというわけだ。「実利的なタカ派」と評される所以である。最近、彼は「経済全体の流れと金融・実体間の相互作用がどのような効果を生んでいるか十分に把握した上で、状況に応じて柔軟に対応することが最も望ましい」と述べた。これは市場の予想よりも慎重かつバランスの取れた政策アプローチを示唆している。
しかし、新総裁が誰であれ、韓国銀行が向かう方向はある程度決まっている。現在は政府による石油最高価格制、燃油税引き下げ、公共料金凍結のおかげで、3月の消費者物価上昇率は2.2%にとどまった。しかし、これは政策で無理やり抑え込んだ「堤防」のようなものだ。ホルムズ海峡の封鎖が長期化し、中東の生産施設復旧が遅れるほど、エネルギー価格の上昇は結局消費者物価へと浸透していく。イラン戦争の影響が次第に和らいだとしても、5〜6月頃の物価上昇率は3%に肉薄するものと見られる。
成長の側面からも引き締めの名分が積み上がっている。半導体を中心としたIT産業に支えられ、今年の成長率が2%を超えれば、経済が潜在水準からどれほど乖離しているかを示す「GDPギャップ」はマイナスから年末にかけてゼロに近づく。緩和基調を維持する論理的根拠が大きく弱まるのだ。ここに首都圏の住宅価格上昇と家計負債拡大に伴う金融不均衡、ウォン安が招く輸入物価の圧力が加われば、利上げの名分はより一層鮮明になる。
肝要なのは「速度」だ。韓国は三カ国の中で家計負債の負担が最も大きい。金利を急激に上げすぎれば、積み上がった負債の重みが景気回復の芽を摘み取りかねない。逆に遅らせれば物価の手綱が緩み、ウォン安と連動した輸入インフレが蔓延しかねない。米FRBの動向も変数だ。韓米の金利差が広がるほど、資本流出とウォンのさらなる独歩安圧力は強まる。韓国銀行は国内情勢だけでなく、対外変数も注視せねばならない。