昨年、安倍政権の支持率を急落させる事態を招いた「私学スキャンダル」が再び日本政界の「台風の目」になろうとしている。朝日新聞が2日、「財務省が(安倍首相の私学スキャンダルをもみ消すために)公文書を偽造した疑いがある」と報道、安倍首相の痛いところを真正面から突いた。元大蔵官僚の高橋洋一嘉悦大学教授は産経新聞の取材に「政権か朝日のどちらかが倒れる究極の戦いだ。報道が事実なら近畿財務局がお取りつぶしになるなど、財務省の解体がありうる。誤りなら朝日が危機だ」と話したという。

 私学スキャンダルは昨年3月に降ってわいた。森友学園という極右の学校法人が安倍昭恵首相夫人に名誉校長を委任、9億5600万円の国有地を「たった」1億3400万円で購入していたことが発覚した。時価8分の1という安値だった。理事長が安倍首相と親交があるのをいいことに、できないはずのことをできるようにしようとした典型的な権力型特恵疑惑事件だった。このスキャンダルで安倍首相は一時、支持率を20%台まで落とした。だが、自民党が昨年10月の衆議院議員総選挙で起死回生となる圧勝を果たし、スキャンダルも落ち着くかに見えた。

 ところが朝日新聞は今月2日の報道によりそのスキャンダルに再び火をつけた。「森友学園が国有地を契約する際に財務省が作成した公文書と、私学スキャンダルが起こった後に国会に提出した公文書は異なる」と報道したのだ。契約時に作成した文書には「特例」という表現が何度も入っている。「学園の要請に応じて鑑定した」という話もある。しかし、財務省が国会に提出した公文書にはそうした文言がないという記事だった。

 野党が「朝日新聞の報道は事実なのか」と追及すると、財務省は「6日に国会で報告する」と答えた。だが、いざ6日になると、「大阪地検が捜査している事案なので関連文書はすべて検察にあり、確認が難しい」と言葉を翻した。

 報道が事実なら、財務省官僚や職員がスキャンダルを隠すために公文書を事後に操作した可能性が高い。財務省は安倍政権ナンバー2の麻生太郎副首相が大臣を務めている。自民党内からも「疑惑が事実なら、少なくとも麻生氏は辞任しなければならない事案だ」という声が出ているのはこのためだ。

 日本の知識人たちは朝日新聞を日本で最高の権威ある新聞に挙げる。部数は読売新聞の方が上回っているが、猛烈な取材と深い報道では朝日新聞にかなわないという評価が多い。しかし、安倍首相とは長年にわたり悪縁が続いている。

 安倍首相は初めて政権を取った時(2006-07年)、「国家観教育強化」「領土教育強化」といった理念的な政策に力を入れた。国会で「慰安婦を強制連行したという証拠はない」と発言、韓日関係を急速に冷え込ませた。朝日新聞はそうした安倍首相の歴史観や外交路線を事細かく批判してきた。

 強硬右派の安倍首相は「慰安婦問題そのものが朝日新聞の誤報のために大きくなった」と信じていると言われる。朝日新聞は1980年代、「済州島で多数の女性を、狩りをするように強制連行して慰安婦にした」という日本人・吉田清治氏=2000年死去=のインタビューを掲載した。朝鮮の若い女性たちが本人の意思に反して犠牲になったというのが慰安婦問題の核心であり、歴史的なファクト(fact=事実)だが、吉田氏という個人の発言は状況上、つじつまが合わないフィクション(fiction=虚構)だと明らかになった。このため、朝日新聞は初期にのみ吉田氏の発言を報道し、以後は言及しなかった。

 安倍首相は2012年に再び執権に成功した。安倍首相を支持する勢力は朝日新聞の吉田証言記事を執拗(しつよう)に問題視した。朝日新聞の慰安婦報道全体の脈絡は「本人の意思に反して連行された人がいる」というものだが、これら勢力は吉田氏のインタビューにばかり食いついた。朝日新聞はとうとう2014年8月に吉田氏関連インタビューが誤報であることを認め、記事を取り消した。

 その後も安倍首相は国会で「安倍政権打倒が朝日新聞の社是」と公然と同紙を攻撃した。それでも朝日新聞は「政権批判」をあきらめなかった。昨年、私学スキャンダルが起こった時に大小のスクープを出し、全体的な流れをリードしたのは朝日新聞だった。財務省職員が森友学園理事長に「ゼロ(0)に近い金額になるようにしてやる」と話す録音テープや、首相の複数の参謀が文部科学省の職員たちを呼んで、別の私学不正疑惑「加計学園に許可を出せない理由を書いて出せ」と圧力を加えたという公文書を報告したのが代表的な例だ。

 朝日新聞が今回の公文書偽造疑惑を報道した後、野党は「事実なら内閣は総辞職しなければならない」として6日から国会のボイコットに入った。

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