韓国企画財政部と韓国銀行は2月9日、スイスと100億スイスフラン(約106億ドル)規模、期限3年の通貨スワップ協定を結ぶことで合意したと発表した。スイスフランは米ドル、ユーロ、円、英ポンド、カナダドルと共に世界の6大基軸通貨に数えられる。スイスとの通貨スワップ締結に成功したことで、韓国の金融の安定性はさらに高まったと評価できる。

■「第2の外貨準備」
 通貨スワップは文字通り、通貨を交換し合うことを意味する。互いの相手国の通貨を取り決めた為替レートで相互交換する為替取引であり、元々は異なる国の個人や企業による取引で為替変動リスクに備えるために生まれた金融商品の一つだった。しかし、最近は通貨危機を防ぐために国家間で結ばれる通貨スワップ協定が一般的になっている。

 国家間の通貨スワップは有事に際し、あらかじめ定めた限度内で自国通貨を相手国に預け、所定の為替レートで相手国通貨を借り入れることができる契約だ。例えば、韓国が通貨スワップ契約を結べば、韓国は必要な時にウォンをスイスの中央銀行に預け、スイスフランを調達できる。外貨不足で通貨危機が起きれば、相手国が限度内で外貨を融通してくれるため、流動性危機を回避することができる。そうした意味で、通貨スワップは「第2の外貨準備高」とも呼ばれる。外貨準備高が外貨不足に備える「積立金」ならば、通貨スワップは一種の「当座貸越」と言える。通貨危機に際し、国際通貨基金(IMF)から資金支援を受けるためには、さまざまな規制を受けることになり、経済主権と国家イメージが低下しかねない。これに対し、通貨スワップは特に干渉を受けず、安定的に外貨流動性を確保できるというメリットがある。

■金融危機で本格化した通貨スワップ
 2008年の世界的な通貨危機は、世界の主要国が通貨スワップ協定を通じた外貨のセーフティーネットを構築する契機となった。米連邦準備理事会(FRB)は07-08年の金融危機を受け、欧州連合(EU)、スイス、韓国など14カ国の中央銀行と二国間の通貨スワップ協定を結んだ。規模は総額5800億ドルで、世界の金融市場によるクレジットクランチ(信用収縮)を防ぐための巨大なセーフティーネットが形成された。これについて、フランスのシンクタンク、国際経済予測研究センター(CEPII)は「FRBが通貨スワップを通じ、全世界の最終貸出機関の役割を担うことになった。通貨と金融市場の不安定性をコントロールする手段として、通貨スワップが登場した」と分析した。

 金融危機後、各国の中央銀行は通貨スワップ協定を拡大している。米国、ユーロ圏、英国、日本、スイス、カナダなど6カ国・地域の中央銀行は13年、常時有効の多国間通貨スワップ協定を結んだ。自国でドルが不足した場合、他国の中央銀行から3年間の短期融資を受ける内容だ。日本は中国に対抗し、東南アジアへの影響力を拡大する手段として、通貨スワップを活用している。シンガポールに続き、昨年にはタイ(30億ドル)、フィリピン(120億ドル)との通貨スワップを結んだ。中国も人民元の国際化に向け、通貨スワップを積極的に利用している。中国は韓国など32カ国と3兆元を超える通貨スワップ協定を結んでいる。

 通貨スワップは一国の信用格付けを向上させる要因にもなる。外国人の投機資本による攻撃で、外貨が引き潮のように流出しても、外国から流動性を確保し、防衛することができるからだ。また、通貨スワップ協定を結ぶということは、互いを簡単にはデフォルト(債務不履行)には陥らない国として認定することを意味し、国内金融市場に心理的な安定をもたらす。キム・ドンヨン経済副首相が昨年10月、中国との通貨スワップ協定を延長した際、「通貨スワップは多ければ多いほどよい。米国であれ、日本であれ、機会があれば結びたい」と述べたのもそのためだ。

■米日との交渉難航
 今回のスイスとの通貨スワップをきっかけとして、基軸通貨国である米国、日本との通貨スワップも関心事になっている。韓国は現在、米ドル、日本円、ユーロによる二国間通貨スワップ協定がない。国際取引に多用される信頼性が高い通貨とウォンを交換できる協定を結ぶことが重要なのだが、実情はそうではない。特に米日とは過去に通貨スワップ協定を結んでいたが、現在は解除された状態だ。
 韓国は世界的な金融危機を経験した08年10月、米国と300億ドル規模の通貨スワップ協定を結んだことで、対ドル為替レートが正常化し、金融市場が安定を取り戻した。しかし、期限の2010年2月に協定が終了後、両国間では正式は協定延長交渉はなされていない。韓国は再交渉に向け、米国と水面下で話し合いを続けているとされるが、市場に放出した巨額の米ドルを回収している米国にとっては、韓国と通貨スワップ協定を締結する明確な理由がないとの分析が支配的だ。米国にとっては、通貨スワップが潜在的にドルを国外に輸出する要因になるからだ。韓国も韓米自由貿易協定(FTA)改定交渉と重なり、再交渉を強く要求しにくい状況にある。韓国銀行の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁は2月9日、韓米通貨スワップ再開の可能性について、「先走って発言するのは難しい」と言葉を濁した。

 日本の場合は事実上、両国間の協議ルートが全てストップした状態だ。日本は実は韓国が最初に通貨スワップを結んだ国だった。韓日通貨スワップは01年の20億ドルからスタートし、11年には700億ドルにまで規模が拡大した。しかし、12年に独島(日本名・竹島)の領有権争いなど外交問題で規模が130億ドルへと縮小され、15年2月に完全に終了した。16年8月、韓国の求めで交渉が再開されたが、昨年1月に日本側が釜山の日本領事館前への慰安婦少女像設置を理由に交渉中断を宣言し、現在まで交渉が行われていない。

■万能薬はない 経済の基礎体力を
 通貨スワップ協定は当事国間で結ばれる国際契約なので、政治的、外交的要因による影響を受けざるを得ない。独島、慰安婦の問題をめぐる対立で韓日通貨スワップが中断したように、韓中通貨スワップも昨年、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)問題で中断の危機に直面した。昨年10月に何とか協定が延長されたが、北朝鮮リスクが高まる中、通貨スワップを含む中国との経済協調は不安な状況だ。

 経済専門家は通貨スワップが為替市場の安定を保障する「万能薬」にはならないとアドバイスする。世界的な通貨危機は特定の国にだけ起きるものではなく、各国で同時に発生するため、通貨スワップを結んだ国から実際に支援を受けることが難しくなる可能性もある。成太胤(ソン・テユン)延世大教授は「通貨スワップに頼るよりも、外貨準備高を安定的に管理し、経常収支黒字を持続的に維持するとともに、通貨危機自体が発生する余地を小さくすることが重要だ」と語った。

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