「中小製造業の平均営業利益率が3-5%なのに、最低賃金を毎年10%以上引き上げるというのは、事実上事業をやめろというに等しい」--全羅北道の自動車部品メーカー経営者。

 「長官が中小企業の現実を把握するため、3カ月にわたり繊維、めっき、鋳物など劣悪な環境の中小企業で働いてみるというのはどうか」--中小ベンチャー企業部(省に相当)の長官懇談会で京畿家具組合のチョン・ヨンジュ理事長。

 2年間で最低賃金29%引き上げというショックは、自営業だけでなく、中小製造業にも広がっている。中小企業経営者は週休手当を含む最低賃金が日本を超えたのに続き、来年には日本との差が1000ウォン(約99円)以上開くと懸念している。製造業経営者は「人件費ですら日本企業に押されることになった。さらに労働時間まで短縮され、これまで強みだった納期対応能力まで失えば、世界市場で競争力が完全に低下してしまう」と話した。こうした雰囲気の中、16日に開かれた中小ベンチャー企業部の洪鍾学(ホン・ジョンハク)長官と中小企業経営者の懇談会では、政府に対する不満が爆発した。

■「事業をやめろというのか」

 全羅北道群山市の自動車部品メーカーD社の経営者は、来年も最低賃金が2桁台で引き上げられることについて、「虚脱感を覚える」と述べた。昨年最低賃金が16.4%上昇したことを受けて実施した構造調整が1年足らずで役に立たなくなったからだ。D社は年初来、従業員数を100人から80人に減らし、利益率が低い製品群の生産を取りやめ、コスト構造を改善した。売り上げは10%ほど減少したが、黒字が出るように体質を改善したのだ。経営者は「来年最低賃金が10%以上上昇すれば、人件費が8%増え、再び赤字を心配しなくてはならない。座して赤字を出すか、従業員を解雇しろというもので、製造業はもうやめろと言っているに等しい」と訴えた。群山の別の部品メーカー経営者も「最低賃金が上昇し、GMが撤退したことで、従業員の半数以上の70人を整理したが、これ以上は無理だ。利益が上がらない中小企業の賃金ばかり上げろというのは、現場の状況を全く知らない決定だ」と憤った。

 2年で最低賃金が29%上昇することで、勤労者間でのバランスも懸念材料だ。京畿道抱川市にある繊維メーカー経営者は「時給8530ウォンと言えば、勤続5年目の技術者レベルだが、入社したての外国人従業員に同額を払うわけにはいかないじゃないか。そうかといって、従業員全員の給与を引き上げれば赤字は明らかだ」と語った。同社は昨年の売上高が60億ウォン、営業利益が2億ウォンだった。従業員60人の人件費上昇だけで黒字分は吹っ飛ぶ計算だ。

■「長官は現場に来てみろ」

 ソウル市汝矣島の中小企業中央会で洪長官が開いた懇談会でも中小企業経営者は苦言を呈した。ある中小企業経営者は「労働界のことばかりを代弁する公益委員の任命方式を変えなければ、来年の最低賃金交渉も偏ったものになる。長官は長官職を失うとしても直言すべきだ」と迫った。時計産業協同組合のキム・ヨンス理事長は「所得主導成長の方針を変えてもらいたい」と現政権の経済政策の柱を真っ向から批判した。

 出席者の1人は「今回の最低賃金引き上げに対する中小企業経営者の怒りが過激な表現となって飛び出した」と述べた。別の出席者は「洪長官が業界の悩みを直接聞きに来てくれたのは有り難いが、果たして中小企業経営者の意見がどれほど反映されるかについては疑っている」と話した。洪長官は労働組合主要2団体、公務員労組に対し、「零細事業者製品購入運動」「オンヌリ商品券(従来型市場で使用する目的の商品券)購入割合拡大」を求めた。また、大企業には「納品単価見直し」を要求した。しかし、中小企業は実効性は小さいと受け止めている。韓国経済研究院のキム・ユンギョン企業研究室長は「最低賃金を大幅に引き上げた後、中小企業と零細事業者を別途の支援策で支援するには限界がある。最低賃金引き上げのペース、範囲を細かく検討する必要がある」と指摘した。

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