「低信頼社会」韓国、盗撮におびえる若いカップルたち

 就職活動中のコさん(26)は先月、格安の22万ウォン(約2万1000円)でソウルの新羅ホテルに彼女と1泊した。「モーテルでの隠しカメラ」の恐怖について互いに話し合った後だった。そんな中、「韓国最高のホテルなら、さすがに隠しカメラも設置しにくいのではないか」と冗談交じりに話すようになり、やがて小遣いをためるようになったという。コさんは「何度も安い所に行って不安におびえるよりは、1回だけど安心して行ける所がいい。隠しカメラのおかげでこれまで一度も行ったことがない五つ星ホテルにも行くようになった」と恥ずかしそうに語った。

 ソウル市内の大学に通うチョさん(21)は、盗撮を恐れる友人から使用料を受け取ることで下宿部屋を貸し出している。チョさんは、休みの間は自宅のある慶尚南道昌原市に帰る。この話を聞いた友人が「モーテルのような所は隠しカメラが気になって行くのが怖い。部屋をちょっと貸してくれないか」と1日3万ウォン(約2900円)の使用料を支払う提案をしたという。チョさんはこれを快く引き受けた。使用当日は友人が携帯メールの送信と共に口座に入金する。チョさんは「口コミでうわさが広がり、他の友人からも問い合わせが入るようになった。時間帯別に貸し出す案も検討中」と笑みを浮かべた。

 中には、個人の下宿部屋も信じられないという人もいる。2015年には、ソウル市冠岳区新林洞の女子大学生のワンルームに、大家の息子が隠しカメラを設置。警察に逮捕されている。ソンさん(女)=23=は今年1月、盗撮探知業者に50万ウォン(約4万9000円)を支払って部屋を点検した。幸い隠しカメラは設置されていなかった。「値段が高くて悩んだが、結果的に設置されていないことが分かり、ほっとしている」と胸をなでおろした。

 二人きりの場所を探し求めてさまよう「デート・ノマド」たちは「新たな技術は引き続き開発されるため、手口もますます巧妙になるだろう。いつどこで撮られているか分からないため、デートの場所を決めるのも容易でない」と口にする。建国大学モム文化研究所のユンキム・ジヨン所長は「デート・ノマドの出現は、若者たちの健全な性文化の形成を盗撮犯罪が邪魔しているという証拠」とした上で「ある日突然、自分が狙われるのではないかと恐怖におびえなければならない低信頼社会の断面とも言える」と説明した。

イ・ヨンビン記者
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