「世子」と呼ばれた事務総長の息子のために…絶句してしまう韓国選管の採用不正【5月1日付社説】

 韓国の中央選挙管理委員会と各地の選挙管理委員会が過去10年間に291回行った公務員中途採用の全てで不正や規程違反があったことが、監査院の監査によって明らかになった。摘発された採用不正はおよそ1200件に達する。元職・現職の選管職員の息子・娘や将来の婿など21人が合格し、このうち12人は不正に採用されていた。監査院は検察に対し、元職の中央選挙管理委員会事務総長(閣僚級)1人と事務次長(次官級)1人など、元職・現職合わせて27人の捜査を要請した。他の事務総長など22人の不正疑惑資料も検察に渡した。選管は4級以上の職員が350人ほどいる組織だが、一度に49人もの元職・現職者が不正の嫌疑をかけられた。前代未聞の事件だ。

 監査院が明らかにした採用不正の内容は、想像を超える。選管は元事務総長の息子を選抜しようと、それまで存在しなかったポストを新たにつくり、しかも面接官に「父親の同僚たち」を当てた。面接でほぼ最高点を取って合格したこの息子に、根拠規定もなく官舎まで提供してやった。選管において総長は最高権力者にほかならず、この息子は「世子(世継ぎ)」と呼ばれたという。別の元総長の娘を選抜する際には、面接委員に「空の点数表」を提出させた後、点数を操作した。元事務次長の娘も、採用の公告なしに特定人物の志願のみを受け付けるという人事を通して、希望のポストを得た。腐敗が横行する国で起きていそうな不正のありさまに、絶句してしまう。

 監査院によると、地方選管の6級職員が2019年に郡守を訪ね、選管4級職員の子女に関する人事請託を行った。当初、郡守は請託を拒絶した。しかし「次の選挙でまた出馬しようと思っているが、選管が圧迫を続けるので、同意してやるしかなかった」と供述したという。選管はあらゆる選挙を指導・監督する機関なので、選出職公務員や出馬を考えている人物は、その顔色をうかがわなければならない。国会議員も、選管の前では神経を使う。選出職にとって、選管は権力機関だ。

 韓国選管はこれまで「憲法上の独立機構」であることを掲げて、設立からおよそ60年間、ただの一度も監査院の職務監察を受けなかった。採用不正疑惑が浮上しても独自の監査に固執し、免罪符を与えた。調査が進行中の事務総長と事務次長を懲戒前に免職処理し、公職への再任用や年金受領に不利益がないようにしてやった。監査の死角地帯において、内輪で特別待遇をやりとりし、「神の職場」をつくり上げていた。こんなことで、自分の仕事をきちんとできるはずがない。大統領選挙で投票用紙をザルに入れて運び、既に記入済みの投票用紙を有権者に交付した。主な選挙が迫ってくると、休職者が大量発生する。北朝鮮のハッキング攻撃を8回受けても気付かなかった上に、ハッキング調査も拒否した。この選管は、そのままにしておくことはできない。

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