サッカーは11人でプレーする団体競技だ。「チームより偉大な個人はない」という言葉もある。だが、芸術的な個人技でDF数人をかわし、コンピューターゲームのようにゴールを決める選手もいる。リオネル・メッシ(アルゼンチン)やネイマール(ブラジル)のようなスーパースターの場合、その選手自体がチームの戦術になることもある。

 U16(16歳以下)韓国代表のイ・スンウ(16)=バルセロナ=もめったにいない天才タイプの選手だ。まだ高校1年ながら、14日に行われたU16アジア選手権準々決勝の日本戦ではドリブルで50メートル独走してゴールを決め、サッカーファンの期待を膨らませた。17日のシリアとの準決勝では1ゴール4アシストをマークし、韓国を7-1の大勝に導いた。イ・スンウは20日に行われる北朝鮮との決勝戦に備えて練習に励んでいる。

■バルセロナも認めた才能

 イ・スンウが注目を集める理由は、アジア選手権で見せたテクニックだけではない。スペインの名門バルセロナに選ばれたという点、競争の激しいバルセロナのユースチームで不動のレギュラーとして3年も活躍し続けているという点で、ファンの期待がより大きくなっているのだ。

 イ・スンウがバルセロナに入団するきっかけになったのは、2010年に南アフリカで開催された12歳以下の小学生対象の国際サッカー大会「ダノン・ネーションズ・カップ」。このときソウル市内の小学6年生だったイ・スンウは、U12ワールドカップ(W杯)とも呼ばれる同大会で、サッカーのあらゆるテクニックを駆使し、地元住民の間でスターとなった。バルセロナ・ユースチームのアルベルト・プイチ・チーム長は「ものすごい東洋の少年がいるといううわさを聞き、即座に飛行機のチケットを買って南アフリカに飛んだ。DFを何人もかわせるドリブルはもちろん、ループシュートやボレーシュート、シザーズキックなどさまざまな技を見せ、イ・スンウが非凡な才能の持ち主だということが一目で分かった」と語った。

 世界的なスター、メッシもアルゼンチンのニューウェルズ・オールドボーイズのユースチームで優勝トロフィーを幾つも手にし、2000年には13歳にしてバルセロナにスカウトされた。当時、メッシは身長が140センチにも満たなかった。現在は169センチあるが、バルセロナは当時、メッシに成長ホルモン治療代として年間数千万円の費用を支援し、世界最高の選手に育て上げた。プイチ氏は「われわれは無駄なことにはカネを使わない。イ・スンウは同年代の子どもたちに比べて特別優れているのは明らかで、身長もメッシがイ・スンウの年齢だったときよりはるかに高い」と話した。大韓サッカー協会のデータでは、イ・スンウの身長は現在173センチ(60キロ)だ。

■性格はマラドーナ

 イ・スンウは6日、U16アジア選手権グループリーグを終えた後のテレビのインタビューで「これまで通りにやれば(準々決勝で)日本くらい簡単に勝てる」と話した。この発言をめぐって一部では「生意気だ」との声も聞かれた。だがイ・スンウは日本戦で2ゴールを決め、自身の言葉がうそではなかったことを証明した。

 サッカー協会の関係者は「イ・スンウの性格は、例えるならメッシよりもマラドーナに近い。自分に対する世間の注目を楽しめるタイプで、ヘアスタイルやアクセサリーなどで個性を思い通りに表現する」と説明した。だがチームワークを損ねるような振る舞いはしていないという。

 SBSのパク・ムンソン解説委員は「成長過程で重圧を乗り越えられずに消えていく有望な若手も非常に多かった。幼くして遠い異国で生活するユース選手には、批判よりも褒めることと励ますことが必要」と指摘した。

ホーム TOP