韓国を訪れている村山富市元首相(90)は9日、「村山談話」と「河野談話」を否定する安倍内閣の動きについて「国際的な約束であり継承する以外にないと確信する」「(韓国は)不安を感じる必要はない」と述べた。

 村山氏はこの日午後、ソウル市銅雀区の崇実大学で名誉博士号授与式に出席。直前のメディア取材で「日本国民の多くも談話を継承しないことに賛成はしていない」との見方を示した。

 村山氏は「日本国民が満場一致で認めるかどうかは別の問題だ。思想の自由があるため談話に反対するという考え方ももちろんある」とする一方で「国民の大多数は談話を受け入れている」と主張した。

 村山氏はかつて自民・社会両党の連立政権で首相として在任していた1995年、第2次大戦の終戦50年を迎えた際、植民地支配と侵略を認めてこれを謝罪する内容の「村山談話」を発表した。

 村山氏は韓日首脳会談の早期実現と、日本軍慰安婦問題と歴史問題での対立解消に向けた韓日の対話を訴えている。

 とりわけ日本軍慰安婦問題については「日本政府が賠償に応じないのであれば、日本国民が基金を立ち上げて賠償金を支払うのが望ましい」としている。

 日本政府は村山談話が発表された1995年、賠償問題がすでに解決したとの立場を守りつつも、一方で人道的な責任は認めてアジア女性基金を設立し、民間からおよそ5億6000万円を集め、2002年9月までに285人の元慰安婦女性らに支払った。

 韓国側も最初は同基金からの支払いを受け入れたが、市民団体などから「日本政府による誠実な反省がない」と抗議を受けて後から受け取りを拒否し、アジア女性基金は2007年に解散した。

 村山氏は「韓日首脳会談が実現した場合、日本政府は韓国が反対している安倍首相の靖国神社参拝問題について明確な立場を示すべきだ」と強調した。

 日本の集団的自衛権の行使に反対する意向も明確にした。村山氏は「日本国憲法には戦争してはならないことが明記されている。ところが安倍政権は憲法解釈を見直し、集団的自衛権の行使を目指している」とした上で「これは憲法の存在を否定するようなものだ。絶対に許すことはできないし、認めることもできない」と強調した。

 ただしその一方で「今後の法改正がどのように進められるかについては、国民の間で議論が起こるだろう」との見方も示した。

 村山氏はこの日、崇実大学から名誉政治学博士の学位を授与された。日本による蛮行を正直に謝罪した点が高く評価されたからだ。

 学位授与について村山氏は「(最初に)連絡を受けた時は学位を受ける資格があるのか迷ったが、感謝して受け取ることにした」「わたしは高齢だ。学位を受けるにふさわしいよう、今後も韓日両国の友好に向け努力を重ねていきたい」とコメントした。

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