サッカー
女子サッカー:韓国代表入り目指す在日3世カン・ユミ
大村裕美(おおむらひろみ)。
女子サッカー韓国代表チームのMFカン・ユミ(24)=華川KSPO=が高校入学前まで使っていた名前だ。カン・ユミは在日韓国人3世だ。東京生まれのカン・ユミは小さいころから「太極マーク(韓国国旗マーク)」をつけて世界の舞台を駆け巡るのが夢だった。今年4月、ロシアとの親善試合でAマッチ戦デビューを果たしたカン・ユミは、今年カナダで行われる国際サッカー連盟(FIFA)女子サッカーワールドカップ(W杯)最終エントリーに残るため、トレーニングに汗を流している。
8日、坡州NFC(韓国代表トレーニングセンター)に入所したカン・ユミは「(8日は韓国で)父母の日だからか、きょうは特に日本にいる両親の顔が思い出されます。最終エントリーに残ってW杯本大会にも出場できたら、サッカーファンの父が誇りに思ってくれるでしょう」と語った。先月30日に予備リスト26人を発表したユン・ドクヨ監督(54)は今回の国内組招集練習終了後、最終エントリー23人を確定する方針だ。
カン・ユミの坡州NFC入所は、4月のロシアとの親善試合時以来2回目だ。カン・ユミは「子どものころから夢見ていた場所で、代表のトレーニングウエアを着てボールを蹴っている今この瞬間がとても幸せ」と言った。
カン・ユミは幼稚園のころから、地元のサッカーチームに参加しているタクシー運転手の父親について行ってグラウンドの片隅でボールを蹴っていた。家の中でもボールを蹴って母親にしかられたことがよくあったという。9歳の時に在日韓国人の子どもたちがメンバーの「ムグンファ・ジュニアサッカースクール」に入った。2002年の韓日共催W杯の時はムグンファ・ジュニアの仲間や在日韓国人団体の人々と一緒に飛行機に乗って韓国に来て、韓国代表を応援したりもした。「大邱W杯スタジアムで行われた韓国と米国の試合を見たが、かっこいい安貞桓(アン・ジョンファン)選手がヘディングシュートで同点ゴールを決めたシーンは今もはっきりと覚えています。韓日共催W杯は在日韓国人たちにも大変な感動を与えた大会でした」
中学校に入学して日本人の友達と一緒に「さくらガールズ」でサッカーを続けたカン・ユミだが、韓国の高校に進学することにした。「韓国国籍があったので、サッカー選手への道を歩み始めた以上、絶対に韓国代表になろうと思いました」と言う。そして、韓国女子サッカー界の名門・ソウル東山情報産業高校に入学した。このころから日本名「ひろみ」ではなく、パスポートに記載されている韓国名「ユミ」を使うようになった。「裕美」という漢字を韓国式に読めば「ユミ」になる。
しかし、それまで韓国語と言えば「アンニョンハセヨ(こんにちは)」「コマプスムニダ(ありがとう)」しか知らなかったため、練習で苦労した。これまで育ってきた場所を離れての生活ということで孤独感も募り、毎晩電話機を握ったまま泣いた。3カ月目から徐々に韓国語に慣れて、練習が楽しくなってきた。「1年先輩の池笑然(チ・ソヨン)選手(チェルシーLFC)を見て、ドリブルやシュートなどのいいところを習うことができました。私が漢陽女子大学に進学したのもすべて笑然先輩の影響です」。2008年にはアジア・サッカー連盟(AFC)U-19(19歳以下)選手権に出場、4試合で5得点を決めた。その後、あこがれの池笑然と共に2010年のFIFA U-20 W杯にも出場した。
カン・ユミの最大の目標はW杯優勝と韓国女子サッカー復活だ。「日本女子代表が11年のドイツW杯で優勝した時、日本では『澤穂希(さわほまれ)ブーム』が巻き起こりました。その年、日本人たちは東日本大震災などで失意に陥っていました。日本代表のキャプテン澤穂希選手が女子W杯大会で最優秀選手や得点王(5点)になり、日本を優勝へと導いたことは日本人たちに希望を与えました。その後、女子サッカーブームが起きたように、私も世界の舞台で活躍して韓国女子サッカーブームを巻き起こせるような選手になるのが夢です」
韓国代表チームは20日、米ニュージャージー州に向けて出発し、米国代表チームと親善試合(31日)を行った後、来月4日に決戦の地カナダに向かう。来月7日にカナダで開幕する女子W杯で、韓国はブラジル(10日)、コスタリカ(14日)、スペイン(18日)とのグループリーグ3試合に臨む。