環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の協定文が先月の合意のちょうど1カ月後の5日、ニュージーランド政府から発表された。TPPは多国間協定にもかかわらず、一般的な二国間FTAに比べ、市場開放度がはるかに高いことが分かった。このため、対外依存度が高い韓国にとっては、TPP加入が遅れるほど日本に輸出競争力で劣り、国益が打撃を受けるとの見方が出ている。

 TPPは米国、日本など12カ国が参加した過去最大規模の自由貿易協定(FTA)で、今後の国際貿易秩序を主導する世界最大の経済ブロックとなる。韓国はTPP交渉に参加しなかったが、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が先月の訪米当時、TPP加入の必要性を強調するなど、事実上加入意向を表明した状態だ。

■米など7カ国、30年以内に関税撤廃

 TPPの市場開放レベルは予想よりも高かった。参加国は30年かけて、貿易品目全体の95-100%の関税を完全撤廃する。特に米国、マレーシア、ベトナムなど7カ国は全ての貿易品目に対する関税を30年以内に全て撤廃する。オーストラリア、メキシコを除く10カ国は30年かけ、工業製品に対する関税を全て撤廃することに合意した。

 農産物の市場開放レベルも高い。農産物開放を嫌ってきた日本までがコメ、乳製品、サトウキビ、牛肉、豚肉など「センシティブ品目」の関税・非関税障壁をほとんど取り除いたほどだ。許允(ホ・ユン)西江大国際大学院教授は「TPPの市場開放度はかなり高い水準だ.韓国経済がTPP体制から疎外されれば、韓米FTAなどで積み上げてきた経済的実益を失いかねない」と警告した。

■韓米FTAの効果低下

 韓国はTPP参加国のうち、日本、メキシコを除く10カ国とFTAを結んでいる。しかし、日本がTPPの原参加国となれば、韓国が米国などで享受してきたFTA先行効果が大幅に低下する見通しだ。米国は今回のTPP交渉で乗用車、機械、電機・電子分野に相当数の品目で日本に対する関税を撤廃することを決めた。乗用車は最長25年と開放時期が先だが、機械、電機・電子分野はTPP発効と同時に関税が即時撤廃される。このため、日本と競争する韓国企業に被害が予想される。

 原材料、副資材の輸出も不利になる。TPPには参加国で生産した原材料を自国産と認定し、特恵関税を適用する「累積原産地規定」がある。韓国がTPPに加入しなければ、同規定の適用を受けられず、価格競争力の面で日本に押される。繊維、アパレル産業では空洞化懸念も出ている。累積原産地規定が適用されるベトナムなどに工場を移転しなければ、米国や日本に輸出する場合に関税引き下げの恩恵にあずかれないからだ。

■最大の難関はコメ市場開放

 韓国がTPPに加入する場合、最大の難関はコメなど農産物の市場開放だ。崔炳鎰(チェ・ビョンイル)梨花女子大国際大学院教授は「創設時の参加国である日本までもが開放している状況で、後から加入申請をする韓国が国内農産物市場を開放しないといって持ちこたえるのは困難だろう」と指摘した。

 健康保険財政にも打撃が予想される。TPPには製薬大国である米国の主張により、バイオ新薬の特許保護機関を8年と規定した。韓米FTAが定める5年よりも長い。TPP加入交渉で米国が8年の要求を押し通せば、韓国市場でジェネリック医薬品(後発医薬品)の発売時期が遅れ、薬価が上昇する可能性がある。

 韓国貿易協会のパク・チョンイル通商研究室長は「TPP加入は輸出主体の韓国の産業全般にとって有利だが、自動車産業は日本車の輸入拡大による被害が予想される」と述べた。日本車に対する輸入関税(8%)が撤廃されるためだ。

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